第13話 変人技炸裂

 梨花は古びた書物を手に取り、注意深くページをめくりながら「平安大将棋」について記された部分に目を通していた。この将棋は現代のものとは異なり、戦略や駒の動きが複雑で、特に「猛虎」や「飛龍」といった駒が存在することが彼女の興味を引いた。彼女はこの書物がただのゲームの記録にとどまらず、何か特別な力を秘めていることに気づいていた。


「平安大将棋を集めることで時空を越える…」


 仙人から教わった話と、この書物の記述が一致していることに梨花は驚いた。駒の力が時空を操る鍵であるならば、自分の未来に戻る手段となるのは間違いない。彼女は次のページを読み進め、さらに詳しい情報を探した。


『玉将はおのおの一方の中に住し、金将は脇にあり、銀将は金の次にあり…』


 梨花は、駒の配置や動きが非常に精密に記されていることに驚いた。この「猛虎」や「飛龍」といった駒の動きは、現実世界でも何かしらの魔法的な力を持っているのではないかと感じたのだ。そして、「横行」や「奔車」のような特殊な駒についても、時空を超えるための重要なヒントが隠されているように思えた。


「駒を全て集めれば…未来に帰れるかもしれない」


 彼女の胸に希望が生まれた。しかし、それは同時に非常に危険な冒険を意味していた。源氏と平家の間での戦乱の中、貴重な駒を集めるには、戦場での駆け引きや敵との対峙が避けられない。梨花は覚悟を決め、再び旅に出ることにした。


「塁も同じことを考えているのかしら…」


 彼女は遠くにいるであろう塁の存在を感じながら、手がかりを辿るために平安大将棋の駒を持つ者たちを探し始めた。この時代の戦乱の中で、梨花は果たして駒を全て集め、自分の時代に戻ることができるのか。彼女の新たな戦いが始まった。


 梨花は旅を続ける中、疲れがたまり、ふとお腹が鳴った。「そういえば、何も食べていない…」と呟き、辺りを見渡しても食べ物が手に入りそうな場所はなかった。彼女はしばらく考えた後、自分の「変人技」を思い出した。


「そうだ…私にはこの技があるじゃない!」


 梨花は両手を空中にかざし、まるで見えない食材を掴むような仕草を始めた。彼女の変人技とは、料理の手順を一切無視して、食材がなくても美味しい料理を生み出すことができる、奇妙で不思議な力だ。


「まずは、ふわふわの卵焼きがいいわね」と、彼女が念じると、空中にふわりと卵が浮かび上がり、そのまま割れて目の前で焼かれ始めた。続いて「次は、お肉が欲しいわね」と、見えないところから突然ジューシーなステーキが現れ、焼ける音が辺りに響いた。


「うん、完璧!あとはデザートね」と梨花は笑みを浮かべると、スプーン一杯の砂糖のように甘い香りが漂い始め、突然豪華なパフェが目の前に現れた。


 梨花は出来上がった料理を眺めながら、「こんなに簡単に作れるなんて、やっぱり私って天才だわ」と満足げに言いながら、一口頬張った。


 しかし、すぐに表情が曇った。「…ちょっと、味が薄いかも?」


 変人技にはまだ改善の余地があることに気づきつつ、彼女は再び旅の道に戻ることを決意した。




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