第12話 手がかり

 塁は戦場の混乱の中で、ふと歴史の知識がよみがえった。富士川の合戦は、源氏が平家を打ち破る重要な戦いだったことを思い出したのだ。平家に味方すれば、いずれ滅びに巻き込まれてしまう。そこで彼は、源氏につくことを決意した。


「源氏が勝つ…それなら俺も勝者側に乗るべきだ」


 塁は戦場からの逃げ道を探りながら、源氏の陣地へ向かおうとした。その途中で一人の不思議な老人に出会う。彼は古びた衣をまとい、どこか浮世離れした雰囲気を漂わせていた。


「ここで何をしている?」塁が尋ねると、老人は静かに笑った。


「お前のような者が、この時代にいるのは珍しいことだな。未来から来たのだろう?」


 塁は驚愕し、老人を凝視した。この男は、自分が未来から来たことを知っている――ただ者ではない。


「俺の目的は、未来に戻ることだ」と塁は正直に言った。「どうすればいい?」


 老人はその言葉に頷き、静かに話し始めた。「未来に戻りたいなら、『平安大将棋』の駒を集めるのだ。この駒を全て集めれば、時空を越えることができるだろう」


「平安大将棋?」塁は聞き返した。


「そうだ、平安大将棋は古の時代に作られた特別な将棋だ。その駒は、この時代の各地に散らばっている。全ての駒を集めた者は、時間を操る力を得ると言われておる」


 塁はその話を聞き、希望の光を見出した。タイムマシンが壊れてしまった今、平安大将棋の駒を集めることが唯一の手段かもしれない。


「どこにその駒がある?」塁は焦るように問い詰めた。


 老人は薄く笑いながら、「駒はこの時代の強者たちが所持している。源氏の武将たちや、さらには隠れた山中の者も持っておるだろう。だが、簡単には渡さぬぞ。その駒を手にするには、戦いや知恵が必要だ」と答えた。


 塁はその言葉を胸に刻み、未来に戻るための新たな目的を心に決めた。彼はこれから源氏のもとに向かい、平安大将棋の駒を一つずつ手に入れ、時空を超える力を手に入れようと誓った。


 果たして、塁はこの戦乱の時代で平安大将棋の駒を集め、再び未来へ戻ることができるのだろうか。それは、彼の戦略と勇気にかかっている。


 一方、梨花も自分の状況を打破するための手がかりを探していた。彼女は、壊れかけた小屋の中で、偶然にも古びた書物を見つけた。それは、この時代に関する古文書のようで、カビ臭い匂いとともに、長い間誰にも読まれていなかったことを物語っていた。


「これ…何かの手がかりになるかもしれない」


 彼女は慎重にページをめくりながら、何か重要な情報を探した。そして、数ページ進むと、彼女の目に飛び込んできたのは「平安大将棋」に関する記述だった。


「平安大将棋…?」


 その名を聞いたことはなかったが、書物にはこの駒にまつわる伝説が記されていた。それによると、平安大将棋はただの遊び道具ではなく、時空を越える力を秘めた特別な道具であり、その駒を全て集めることで時空の扉が開くという。しかも、その駒の一部は、古代の仙人たちによって封印され、特定の者しか手に入れられないと書かれていた。


「時空を越える…これだわ。これが私の手がかりになるかもしれない」


 梨花は自分が未来から来たことを思い出し、塁と同様にタイムスリップする手段を探していた。平安大将棋の駒を集めることで、自分の元いた時代に戻れる可能性があると気づいたのだ。


 さらに読み進めると、その駒が現在どこにあるのかというヒントもいくつか記されていた。源氏や平家、さらには隠れ里に住む者たちが駒を保有している可能性が高いという情報だった。


「これで塁に追いつけるかもしれない…!」


 梨花はすぐに行動に移ることを決め、まずはこの駒に関する情報を集めるべく、山を下りることにした。彼女は自分の持つ力と知恵を信じ、平安大将棋の駒を集めるための旅を開始する。




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