第11話 時を操る権力👑

 塁は、現代の混乱した社会において、自分の理想を実現するために過激な道を選ぶことになった。彼は権力者や政府の腐敗に嫌気がさし、テロリストグループに参加することを決意した。彼の目標は、タイムマシンを強奪し、過去に戻って歴史を変えることだった。


 タイムマシンが開発されてからというもの、その技術は限られた一部の富裕層や政府高官だけが利用するものであり、一般の人々はその恩恵を受けられなかった。塁はこれを「時を操る特権」と見なし、それに対する反逆心を抱いていた。彼のグループは、政府の施設を襲撃し、タイムマシンを手に入れる計画を立てた。


 ある晩、塁と彼の仲間たちは、厳重に警備されたタイムマシンの研究施設に忍び込んだ。夜の闇に紛れて進む彼らの動きは慎重で、だが内には確固たる決意があった。塁はタイムマシンのコントロールルームにたどり着くと、操作パネルを素早く確認し、過去へ移動する準備を始めた。


「これで、すべてが変わる…」塁は小さく呟いた。彼の目的は、世界大戦の直前に戻り、歴史の流れを変えることだった。彼は、破滅的な戦争を防ぐことで新たな未来を作り上げ、自分たちの理想を実現できると信じていた。


 しかし、タイムマシンの奪取は思った以上に困難だった。塁たちは政府軍の即応部隊に包囲され、激しい銃撃戦が始まった。仲間が次々と倒れる中、塁はタイムマシンに乗り込んで過去への転送ボタンを押す。


 光が一瞬にして周囲を包み、塁の姿は消えた。しかし、転送先は彼の意図とは異なる場所だった。彼は時間の流れの中で予期せぬ歪みに巻き込まれ、見知らぬ過去の時代に放り込まれてしまった。


 塁が目を覚ましたのは、広大な荒野の中。彼はすぐに、自分がどの時代に来てしまったのかを確認しようと周囲を見渡したが、明確な手がかりはなかった。タイムマシンも彼の近くには見当たらず、彼は孤立した状態で新たな世界に取り残されていた。


 これが彼の望んだ未来なのか、あるいはもっと深い絶望が待ち受けているのか、塁はまだ知らなかった。


 塁が目を覚ました場所は、荒野と思っていたが実は戦場だった。彼が目にしたのは、武士たちが戦の準備を進める光景だった。周囲に響き渡る掛け声や甲冑の音から、彼がタイムマシンで転送された先が鎌倉時代、具体的には「富士川の合戦」の時期であることに気づくまでそう時間はかからなかった。


 彼はすぐにタイムマシンを確認しようとしたが、機体は荒れ地に不時着し、機能停止していた。動揺しながらも再起動を試みるが、タイムマシンは損傷が激しく、未来に戻る手段が失われたことを理解する。


「まずい…こんなところで壊れるなんて…」塁は拳を強く握りしめた。


 そのとき、突然周囲に激しい喧騒が広がり、武士たちが一斉に進軍を開始した。目の前で繰り広げられるのは、源氏軍と平家軍の激突、まさに富士川の戦いの最中だった。塁は、歴史的な出来事に自分が巻き込まれていることを実感しつつ、どうやってこの状況を乗り切るべきか焦った。


 タイムマシンを何とか修理しようと、塁は戦場の隅で必死に動き回った。しかし、兵士たちの戦闘が迫り、彼の周囲はますます混乱に包まれていく。弓矢が飛び交い、馬が駆け抜け、刃と刃が激しく交わる中、タイムマシンも巻き込まれた。


 そして、致命的な瞬間が訪れた。平家軍の騎馬隊が突進してきたとき、馬がタイムマシンを蹴り飛ばし、機体は大破。塁は目の前で、未来に戻る唯一の手段が完全に壊れてしまったのを見届けるしかなかった。


「くそ…!ここで終わるのか…」


 塁は絶望感に襲われながらも、冷静に考えようとした。タイムマシンが壊れた以上、この時代で生き延びるしかない。彼は、戦場から脱出することを第一に考え、必死に策を練り始めた。


 歴史を変えるという塁の野望は、この壊れた時空でどうなっていくのか。未来への道が閉ざされ、塁は新たな生存戦略を見つける必要があった。



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