第8話 魔法取得

 山犬たちとの戦いは一進一退を繰り返し、梨花と右京は互いに力を合わせてなんとか敵を退けていた。しかし、獣たちの数はまだ多く、完全に安全を確保できたわけではなかった。疲労が二人の体に重くのしかかり、息も絶え絶えになってきたころ、突然、右京が軽く笑いながらつぶやいた。


「梨花、もしお前が寝言を言えたら、魔法が使えるかもしれないぞ」


 冗談のようなその言葉に、梨花は一瞬面食らった。「何言ってるの、こんな状況で…寝言?魔法?」


「本当だ。俺の祖母が言ってた。危機的な状況で寝言を言うと、魔法が発動するってな。信じるか信じないかは別にして、試してみたらどうだ?」右京は、まるで余裕を見せるかのように軽く肩をすくめた。


 梨花は半信半疑だったが、極限状態にある今、どんな可能性でも試してみる価値はあった。彼女は一瞬だけ目を閉じ、深呼吸をして意識を集中させた。そして、無理やりにでも「寝言」を言おうと試みた。


「…魔法の力よ、私に力を与えて…なんとかして!」


 その瞬間、梨花の体から暖かい光が淡く放たれ始めた。彼女は驚いて目を見開いたが、信じられないことが起きていた。彼女の手元に何か不思議な力が宿っているのを感じた。


「右京!これって…本当に魔法が使えるようになってる?」梨花は半信半疑ながらも、目の前の現象に驚愕した。


 右京はニヤリと笑い、「どうやらその寝言、効果があったみたいだな。さあ、その力で山犬どもを追い払ってやれ!」


 梨花は右京の言葉に応じ、魔法の力を試すために集中した。彼女の手のひらに光のエネルギーが集まり、その光を指先から前方に向かって放つと、山犬たちは一斉に後退し、怯えた様子で吠え声を上げた。光は彼らを包み込み、まるで何かに怯えたかのように、山犬たちは次々に逃げ出していった。


「すごい…本当に魔法だ!」梨花は自分の手を見つめ、驚きと喜びが交錯する感覚に浸っていた。


 右京は彼女のそばに歩み寄り、にっこりと微笑んだ。「見事だ、梨花。お前にはその力があるって、最初から信じてたぜ」


 梨花は感謝の眼差しで右京を見つめた。「ありがとう、右京。あなたのおかげで、ここまでこれた」


「これで安心だな。だが、気を抜くのはまだ早いぞ。今の魔法の力がどれだけ続くかは分からない。次の危険に備えて、しっかりと準備しよう」右京は慎重に周囲を見回しながら、警戒を怠らなかった。


 梨花もその言葉に頷きながら、彼女の中で再び沸き起こった力を感じていた。「寝言を言うだけで魔法が使えるなんて、信じられないけど…この力が私たちを守ってくれるなら、使い続けるわ」


 そして、二人はさらに奥深い森へと足を進め、次なる試練に備えるのだった。


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