第7話 最凶のスパイス🫚

 梨花は心の中で興奮と恐怖が入り混じる中、山犬たちが自分の方に向かって走ってくるのを見た。彼女の計画は思った以上に成功しそうだったが、次の行動を考えなければならなかった。単に逃げるだけでは不十分だ。彼女は敵を逆手に取る必要があった。


「料理…」彼女の頭の中にひらめきが浮かんだ。自分が培った料理の知識を使うことで、山犬たちを退ける手段があるかもしれない。


 梨花は岩場の近くに転がっていた木の枝を拾い上げ、地面に落ちている石を集め始めた。彼女は、山犬たちが来るまでの時間を使って、思いついた料理のアイデアを形にすることに決めた。


「そうだ、香りで引きつけるんだ」梨花は自分の頭の中で、スパイスやハーブを組み合わせる様子を思い描いた。山犬たちは嗅覚が鋭く、特に肉の香りに敏感だ。彼女は岩場の陰で、自分の持っていた金属棒を使い、拾った石や木の枝を使って簡易的な炭火を作り始めた。


 まず、彼女は近くの木の根元にある腐った木を利用し、その木から得られる油分を火にかけることで、煙と香りを発生させた。すると、あたりには焦げた木の香りが漂い、彼女はその香りを利用して次のステップに進むことにした。


「今度は肉だ…」彼女は心の中で考えた。周囲を見渡すと、獲物を見つけるために森の中をうろついている小動物たちの気配を感じた。特に、近くにはタヌキがいた。梨花は小枝を使って、音を立ててタヌキを驚かせ、逃げる方向を決めさせることにした。タヌキはあちこちをうろうろし、最後には枝を走り抜けていった。


 それを見逃さず、梨花はその足跡をたどり、タヌキを捕まえようと目を凝らした。彼女は静かに地面に伏せ、タヌキが出てくるのを待った。運が良ければ、これが彼女の料理の材料になる。


 数分後、タヌキは警戒しながら近づいてきた。その瞬間、梨花は金属棒でタヌキを捕まえ、簡単に仕留めることに成功した。彼女の心臓は高鳴り、満足感が広がった。


「これで肉が手に入った!」彼女は興奮を抑えつつ、小動物を火の近くに持っていき、急いで料理を始めた。火にかけると、肉の脂が溶け出し、香ばしい香りが立ち込めてきた。その香りは、山犬たちの嗅覚を刺激することだろう。


 山犬たちが近づいてくるのを感じながら、梨花は次のステップを考えた。火の近くにある石を使って、肉を焼く準備をしながら、自分が作っている料理の香りを周囲に広げることで、彼女の計画がさらに進化していくことを確信した。


「来い、山犬たち。私の料理を味わうがいい。」梨花は心の中でつぶやき、火の香りが立ち昇るのを見ながら、期待と緊張の中で待った。


 その瞬間、山犬たちはついに彼女の香りに引き寄せられ、群れを成して彼女の方に突進してきた。梨花はすぐに岩場の後ろに隠れ、待ち構えた。敵が近づくにつれて、彼女は心の中で一つの戦略を練っていた。


「これが私の勝負だ…」彼女は決意を固め、料理の香りが獣たちをどれだけ引きつけるか見極めることにした。


 やがて、山犬たちは彼女の前に現れ、肉の香りを感じ取り、興奮し始めた。梨花はそれを見逃さず、一瞬の隙をついて岩場から飛び出し、山犬たちに向かって声を張り上げた。


「こっちだ、ここにいるぞ!」彼女の声は、山犬たちをさらに引き寄せた。


 その瞬間、梨花は金属棒を使って、思い切り山犬たちに立ち向かう準備を整えた。料理の力を借りて、彼女は敵を倒すための覚悟を決めた。


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