第17話 アルネ

ヴェルデン領への旅立ち


翌朝、ヘインはセラディア領を離れ、ヴェルデン領へと向かう旅路に出発した。リゼットとの別れを済ませた後、馬車に乗り込み、ヴェルデンへの思いを馳せる。再びヴェルデンで挑戦するのは、エリックの提案で、彼が紹介してくれる商人たちと会うためである。そしてヘインはヴェルデン領の主要都市アルネに向かう。


道中、ヘインは今回の旅にかける思いを再確認していた。セラディア領での成功は確かに大きな一歩だったが、それに甘んじるつもりはなかった。新しい挑戦に不安はあったものの、それ以上に期待に胸を膨らませていた。


エリックとの再会


アルネの街に到着したヘインを、エリックが温かく迎えてくれた。かつての展示会で出会った時とは違い、今回はエリックの故郷での再会だったため、彼の表情もどこか誇らしげだった。


「ヘイン、よく来たね!ずいぶんと長い旅だったろう。まずは街を案内しようか?」と、エリックはにこやかに言った。


「エリック様、お会いできて嬉しいです。ありがとうございます、ぜひお願いします。」と、ヘインも微笑み返した。


二人は馬車から降りて、アルネの街を歩き始めた。古い建物が立ち並ぶ通りには、商人たちの活気あふれる声が響き渡っていた。市場の屋台や店の数々を見て、ヘインはこの地の豊かさと、そこに秘められた商機を感じ取った。


「ここがヴェルデン領の中心地アルネだよ。商業の拠点だけあって、多くの商人たちがここに集まっているんだ。」と、エリックが説明した。


「素晴らしいですね。セラディア領とはまた違った魅力を感じます。」と、ヘインは感心しながら答えた。


エリックは満足そうに頷いた。「君がここで成功できるよう、僕も全力でサポートするよ。さっそく今夜、地元の有力な商人たちとの夕食会を準備しておいたんだ。そこで彼らに君を紹介するから、少しでも多くの人と繋がりを作るチャンスにしてくれ。」


「ありがとうございます、エリック様。それにしても、もう準備を整えてくださっていたなんて…」と、ヘインは驚きと感謝の気持ちを隠せなかった。


「君のことは信頼しているからね。僕の友人として、ヴェルデン領でも成功してほしいんだ。」エリックの言葉には、確かな友情と信頼が込められていた。


地元商人たちとの夕食会


その夜、エリックが手配した夕食会が開かれた。豪華な屋敷の広間には、地元の有力な商人たちが集まり、賑やかな雰囲気が広がっていた。ヘインは少し緊張しながらも、丁寧に一人一人に挨拶をして回った。


「皆さん、こちらがヘイン君だ。彼のオルネ商会は、セラディア領で大成功を収めた優れた商会なんだ。」と、エリックが紹介すると、商人たちは興味深そうにヘインを見つめた。


「初めまして、オルネ商会のヘインと申します。セラディア領での活動を通じて、多くの方々に支えていただきました。ここヴェルデン領でも、皆さんと良い関係を築いていければと思っております。」と、ヘインは深々と頭を下げた。


「うむ、若いのに立派だな。」と、一人の年配の商人が笑顔で答えた。「セラディアの製品は評判が良いと聞いている。君の商会の品も、ぜひ見せてくれないかね?」


「もちろんです。お手に取っていただける機会を作りたいと思います。」と、ヘインは即座に答えた。


夕食会の間、ヘインは商人たちと多くの話題を共有し、彼らの関心を引くことができた。エリックの計らいもあり、数名の商人がヘインの商会の製品に興味を示し、具体的な商談の約束を取り付けることができた。


新たな挑戦への手応え


夕食会が終わり、エリックとヘインは夜空を見上げながら歩いていた。涼しい風が二人の顔を撫でていた。


「良い出会いがあったね。これからもっと忙しくなるだろう。」と、エリックが満足そうに言った。


「ええ、本当にありがとうございます。エリック様のおかげで、新しい一歩を踏み出すことができました。」と、ヘインは感謝の言葉を口にした。


エリックは肩をすくめながら微笑んだ。「僕はただの友人として、君を応援したいだけさ。だから、これからも一緒に頑張ろう。」


ヘインはその言葉に勇気づけられ、力強く頷いた。「はい、必ずヴェルデン領でも成功を収めてみせます。」


こうして、ヘインはヴェルデン領での新たな挑戦を本格的にスタートさせた。ここでもまた、さまざまな試練や出会いが待っていることだろう。しかし、彼の心には、セラディア領で得た成功と、リゼットやエリックの支えがあった。


それらの経験と絆を胸に、ヘインは新しい道を切り開いていくのだった。そして、リゼットとの再会を誓いながら、彼の物語はさらに広がりを見せていくに違いない。

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