第18話 開始
アルネでの活動開始
翌日から、ヘインはさっそくアルネでの活動を開始した。エリックの紹介で得た商人たちとの繋がりを活かし、オルネ商会の製品を広めるために、市場や商談の場へ積極的に足を運んだ。セラディア領での成功経験をもとに、商品プレゼンやマーケティングの手法も少しずつ工夫していく。
アルネの市場は活気に満ちており、ここに集まる人々の嗜好やニーズもセラディアとは少し異なっていた。そのため、ヘインは最初こそ戸惑いながらも、新たなアイデアを試し、現地の流行や文化に合った提案を行っていった。
ある日、エリックがヘインに尋ねた。「ヘイン、最近の活動の手応えはどうだい?ここヴェルデン領での挑戦は順調そうに見えるけれど。」
「はい、思った以上に順調です。ただ、やはりセラディア領でのやり方をそのまま持ち込むだけでは通用しない部分もあって…そこは試行錯誤しながら進めています。でも、それがまた新しい挑戦で面白いんです。」と、ヘインは笑顔で答えた。
エリックは彼のその姿勢に感心した。「そうか、君ならどんな困難も乗り越えられると信じているよ。そういえば、来週には商人ギルドの集まりがあるんだ。そこでもう少し大きなプレゼンの場を用意できるかもしれない。参加してみないか?」
「それはありがたいお話です。ぜひ挑戦させてください!」ヘインはすぐに快諾し、さらに気合が入った。
商人ギルドの集まり
ギルドの集まりの日、ヘインは緊張しながらも、しっかりと準備を整えて臨んだ。会場には多くの商人たちが集まり、新たなビジネスチャンスを探していた。エリックも同行し、ヘインに助言を送りながらサポートしてくれた。
ヘインの番が来ると、彼は丁寧に挨拶し、オルネ商会の製品の特徴や魅力を伝えるプレゼンを開始した。彼はセラディア領で培った経験を基に、現地の人々にとってどのように役立つ商品かを分かりやすく説明し、熱意を込めて話し続けた。
「私たちの商会の製品は、使い手の視点に立ったデザインと品質を追求しています。また、ヴェルデン領の文化を理解し、皆様の暮らしに溶け込むような製品をお届けできるよう努力しております。」と、ヘインは言葉を選びながら伝えた。
プレゼンが終わると、会場はしばらくの静寂の後、拍手に包まれた。商人たちは彼の話に耳を傾け、いくつか質問を投げかけてきたが、その全てにヘインは冷静かつ丁寧に答えていった。
その中で特に興味を示した一人の商人が言った。「君の製品、ぜひ取引を考えたい。近くの商業エリアで、新しい商品ラインを探しているところだったんだ。」
その言葉に、ヘインは心の中で小さくガッツポーズを取った。「ありがとうございます。ぜひ、お力添えいただければ幸いです。」
新たな出会いと友情
ギルドの集まりが終わった後、エリックと共に街のカフェで休憩を取っていた時、見慣れない若い男性が声をかけてきた。「君がオルネ商会のヘイン君か?今日のプレゼン、とても面白かったよ。」
ヘインは驚きながらも、笑顔で応じた。「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。」
「俺はアラン。家族でこの街で輸送業を営んでいるんだ。君の商会の商品、もっと多くの場所に広めてみたくないか?うちの船便を使えば、今まで届かなかった場所にも届けられるかもしれない。」
アランの提案に、ヘインは少し考えた。「それは魅力的な提案ですね。でも、まずはもう少し話を聞かせていただけますか?」
「もちろん。エリック様とは昔からの知り合いだし、信頼できる方だってわかってる。もしよければ、今度俺のところに来てくれないか?君の商会の商品を、もっと多くの人に届けられるように力を貸したいんだ。」
ヘインはその言葉に心を動かされた。「分かりました。ぜひお話を聞かせてください。よろしくお願いします、アランさん。」
こうして、ヘインはまた新たな仲間と共に、ヴェルデン領での挑戦を続けていくことになった。エリック、そして新たに出会ったアランの助けを借りながら、オルネ商会をさらに大きく成長させていく決意を胸に、彼の旅路は続いていく。
アルネでの日々は、セラディアとはまた違った発見と試練に満ちていた。しかし、それがヘインにとっては大きな成長の機会となっていた。新しい市場の開拓に挑む中で、彼の心には常にセラディア領で待つリゼットの姿があった。そして、彼女に恥じないよう、また新たな成果を携えて帰ることを誓っていた。
ヘインの物語は、ヴェルデン領での挑戦を通じてさらに広がりを見せ始めていた。
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