第2話

俺の名前は有栖川聡史だ。江戸時代に創設された宮家の末裔で、父親は都内でも有名な総合病院を経営していた。財界の著名人や政治家御用達の超一流病院だ。母は旧華族出身の家柄で、若い頃は宝塚歌劇団で女優として活躍していた人だった。

俺自身は幼稚園から学習院に通い、小学校以降は常に学年トップの成績を独走していたが、中学の頃にたまたま遊びに行った原宿で芸能事務所にスカウトされ、180度違う人生を歩むことになった。14歳でモデルデビュー。大手企業のCMに選ばれた。その後は、学業とサッカーと芸能活動と三足の草鞋を履きながら、忙しい生活を送っていた。女性にモテすぎて一時は十股をかけていた時期もあった。半分は人気アイドルの子たちだった。

大学受験ではほとんど勉強せずに、東大理三に合格。同時にケンブリッジ大学にも合格したから、東大理三を蹴ってケンブリッジに進学。イギリスでは東洋から来たトム・クルーズと呼ばれて、町行く人が俺を見て色めき立っていた。イギリスでもトップモデルとして活躍。ラグジュアリーブランドのパリコレのステージにも参加した。広告も色々やったが、有名どころでは、〇ーバリー、〇ールスロイス、〇ャネルなんかもやった。当時の恋人は世界的なモデルの〇〇〇だった。

大学を卒業した時、世界一の投資銀行に採用され半年働いた後、やっぱり役者になりたくなってアメリカに移住。そこでも、俺は仕事が途切れなかった。アジア人で初めてバッドマンシリーズの主役になり、有名な女優のナタリー・〇〇〇〇〇と共演。ハリウッドで最も重要なアクターの一人にランキングされた。


最初の結婚は28の時で、相手は人気歌手の〇〇〇だった。彼女も俺と同じくらい稼いでいたから、二人で金を出し合ってビバリーヒルズに豪邸を建てて住んでいた。外に出るとパパラッチに追われる生活で子どもたちのプライバシーもなかったが、俺は幸福だった。


しかし、結婚して三年後、俺は映画で共演したフランス人の女優〇〇〇・〇〇〇〇と浮気をしてしまい、妻と離婚。それでも、慰謝料は一切払わずに済んだ。妻は最後まで俺を愛していると言ってた。今でも良好な関係を保っている。


俺はその後、何度か結婚した。全員、甲乙つけがたい美女で、子どもは全部で6人だ。三十代後半にはアジア人で初めてアカデミー賞の主演男優賞も受賞した。その後も、様々な役柄に挑戦し、今一番ホットな俳優と言われるようになっていた。最もセクシーな100人にも選ばれた。


俺は富と名声すべてを得て、我が世の春を満喫していたはずだ。それなのになぜこんな貧乏臭い病院の大部屋にいるんだろうか。現在の妻は元陸上選手の〇〇〇だ。金髪美女でモデルとしても活躍していた。彼女との間にも子どもが二人いたはずだ。今どこにいるんだろうか。家族に会いたい。それより先に俺は起き上がって、今自分がどこにいるかを確かめたい。

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