病棟
連喜
第1話
目が覚めるとそこは病院だった。俺が寝ているベッドはクリーム色のカーテンでぐるりと囲まれていたが、両サイドには人がいる気配がした。無音だけどそんな気がしたのだった。
日本の病院にはよくあるのだが、そこも虫食いの跡のような安い天井材を使っていた。俺は不規則に並んだその模様を目でいつまでも追っていた。あれを病院の天井に使うのは素晴らしいアイディアだと思う。永遠に見ていられる。
それにしても、なぜ俺は今病院にいるのか。どこも痛くないし、何ともないのに。昨日まで俺は自分の家にいた気がする。急にそこにいるわけが分からない。
何故?
たぶん、心筋梗塞とか脳卒中とかで倒れて運ばれて来たんだろう。急に病院に運ばれる状況と言ったって他に思いつかない。
なぜ、自分がそこにいるか確かめたい。
そうだ。起き上がってナースステーションに行くか、または、ナースコールを押して人を呼ぶかしたらいいんだ。しかし、俺は今何を着てるんだろう。病院の入院着だろうか。あれは恥ずかしい。
俺はとりあえず起き上がろうとしたが、体が全く動かなかった。
あれ…。
俺は愕然とした。
これってまさか。
もしかしたら、交通事故などに遭って病院に運ばれたんだろうか。
思い出せない。
声を出して人を呼ぼう。
俺は叫ぼうとしたが声も出なかった。
なぜかわからない。
うめき声を上げた。
誰か俺に気づいてくれ!
時間だけが過ぎて行った。
誰も来なかった。
あまりに長い時間天井を見つめていたせいで、俺は他のことを考えなくてはいけない気がしてきた。
俺は自分がどういう人間で、どんな人生を歩んで来たか記憶を辿ろうとした。
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