第六話
残った顔ぶれにソッフィオーネは目を細めて「初めましての子、いるね?」と首を傾げた。波打った青い黒髪が高い窓から差し込む日光を吸収して、ほんの少しだけ眩しい。隠れた左目が様子を探るようにスリジエを見つめている。
彼のこの幾許か背の高い視線が、ジラソーレはひどく苦手だった。まるで疑念と殺気を醜悪に煮込んだような、兵士の目。女性のように可憐な顔立ちをしているのに、それだけが異質で、ソッフィオーネの本質のような気もした。
「そいつはつい最近入団したスリジエだ。少しだけ魔法が扱えるらしい、興味を持っても不思議ではないだろう―――スリジエ、彼はソッフィオーネ。魔法整備士をしている」
スリジエが口を開くよりも先に、メディチ侯爵が助け舟を出す。
「なるほど、そうなんですね。随分と綺麗な方だから驚いた」
本音を覆い隠した上辺だけの感嘆を上げながら、ソッフィオーネはメディチ侯爵からガラスの筒を受け取る。拳三つ重ねたくらいの大きさのそれには、ぷかりと紫色の石―――魔法石が浮かんでいた。
「きれー…。魔法石を間近で見るの、初めてかも」
スリジエがうっとりと興奮を纏った声を上げる。
ソッフィオーネは壁際に設置された、鈍く錆びた金属で繋ぎ合わせた機械の天辺―――高さはジラソーレを優に超えている、床にはパイプが複数刺されており、金属製の蛸のような見た目だ―――にあるガラスのドームの、さらに上の取り出し口からガラス筒を落とす。ドームの真ん中を遮るようにはめ込まれたガラスの筒。幾重とガラスや水を纏って白く濁った空間の中、魔法石はその高貴な色を保ったまま、美しい。
ソッフィオーネは機械の下部にある電源を入れた―――すると地面を揺らすように、床を突き刺していたパイプが揺れ始めて蒸気を発する。そして中部にある六つのメーター部分がそれぞれ稼働して、数値を告げていた。
「これって何をしているの?」
スリジエが首を傾げて、ソッフィオーネに質問する。身を屈めて、機械の様子を見ていたソッフィオーネが前髪を揺らしながら美しい彼に視線を向けた。
「地面から魔力を抽出して、魔法石に補充してるのさ。この鉱石自体は自分から魔力を吸収することができないからね。元々は人間がやっていた作業を機械がやってくれるなんて素晴らしい時代だろう?」
「へぇ~、便利なものだね!確かに最近は魔法士の数も、魔力も減っているから、こういう機械があった方が有難いんだろうね」
「それ、ずっと思ってたことあるけど質問いいネ?」
スリジエの関心の声に割って入るように、アルレノが言葉を刻む。話をしていた彼らは肩をすくめて、アルレノの話を促した。
「魔法士の数とか、魔力の低下とか―――ダフネもよく言ってるし、国も危機を覚えてる感じはあるネ!でも、並列されて言われるその二つの問題に違和感あるネ!俺のような魔力を持ってない人間から言わせるとあまりピンと来ないネ!実際、これら二つは別々の問題じゃなイ?」
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