第33話 AOとAO2でゼリンの習性に変更が加わっているってことはないですよね?
「もし、旦那様が研究結果を公表した後に、お前の持っている情報が偽の情報だと判明した場合――」
「場合?」
「『猫の眼』ギルドに賠償請求をさせてもらう」
おっと?
これは……大事になっちゃいましたよ?
でも――。
「別にかまいませんよ? わたし、ウソついていないですし!」
AOの世界ではわりと常識的な知識だったし、さすがに偽の情報ってことはないし。……AO2でも同じ、だよね? あれ……急に自信なくなってきた。なんかAOとAO2で違うところがけっこうあるし……。
ちょっと≪サポちゃん≫、その辺りどうなの?
【どうしましたか? 自信がなくなったのですか? 今のうちに武力制圧しますか?】
しないし……。いや、できないし……。
わたしが訊いているのは、AOとAO2でけっこう違いがあるけど、ゼリンの習性に変更が加わっているのか、ってこと!
【私に訊くより、実際に試してみたらいいんじゃないでしょうか? ゼリンならそこらじゅうにいますからね】
うーん。
まあそうなんだけどさ。
この人たちが旦那様のところに帰ったら試してみますかね。
【もしオーラムオンラインの時と違っていたらどうしますか?】
そりゃ……逃げるしか。
【がっつりギルド名も≪アルミちゃん≫の名前も知られていますから、逃げるのは難しいかと】
やっちゃったね……。
ちょっと調子に乗ったかもしれない……。
【な~に、簡単なことですよ】
簡単?
【訴えられる前に口を塞いでしまえばいいのです】
≪サポちゃん≫が悪い顔で笑う。
口を塞ぐって、命を――。
でも、AO2ってAOと同じだよね。プレイヤーは倒れても気絶するだけですぐに復活するでしょ?
【≪アルミちゃん≫のギルド部屋にでも監禁して置けば良いんじゃないでしょうか。鍵もかかりますし】
発想が怖い……。
そんなの良いわけないでしょ……。
とにかくゼリンの習性を確かめるほうが先。
「よし、書類を用意した。文字は読めるか?」
男たちが1枚の羊皮紙を渡してくる。
書類? え、これ契約書じゃないのさ⁉
「今用意したんですか⁉ 旦那様との話し合いは⁉」
使用人なんだから、1回屋敷に戻って旦那様にお伺いを立ててきなさいよ!
何この場で契約書作成しているのさ。
「この件に関しては我々に裁量が与えられている。金額も、提示された程度なら即金で支払える。それよりも、早急に情報の真偽を確かめるほうが重要だと判断したまでだ」
しまった。
安すぎたかー!
もっと吹っ掛けるんだったぁ!
【あまりお金に汚いところを見せると、視聴者が離れていきますよ】
はっ!
お金お金するのはやめないと……ギフトとかももらえなくなっちゃう……。
かわいいアピールしなきゃ……。
「えー、そうなんですかぁ? すっごーい。お兄さんたちってえらい人たちだったんだぁ♡ さっそく契約書にサインしちゃおっかなぁ♡」
【もしかしてパパ活か何かと勘違いしています?】
誰がパパ活か!
おじさんたちはこういう媚びた声が好きなんでしょ⁉
せっかくがんばったのに、なんて言い草だよ!
【≪アルミちゃん≫は自分の年齢を思い出したほうが良いです】
だーかーらー、ここでは15歳なの!≪アルミちゃん≫はかわいいかわいい未成年なの!
【余計にパパ活していたらダメでしょ】
そ、それはたしかに……。
いや、だからしてないってば!
「契約書に不明な点があれば言ってくれ。字が書けるなら助かるな」
「あ、はい!」
また慣れない契約書を読まないといけないのかぁ。
もちろん文字は読めるけれど、内容は……何が書いてあるのかさっぱりわからないね……。金額はたしかにわたしが言った通りの数字で入っているけど……。
【≪アルミちゃん≫大丈夫ですよ】
契約書見てくれたの⁉
たすかるぅ♡
≪オーラム≫さんってこういうの得意そうだもんね!
【そうですね。契約ごとは得意分野です。わざとわかりにくく婉曲な表現をして煙に巻くくらいは朝飯前ですね。朝飯にはネコ缶をお願いします】
煙に巻く……。
10万字の契約書……うっ、頭が……。
【ですが、大丈夫だと言ったのは契約内容のことではありませんよ】
じゃあ何よ?
【仮に最悪のケースとして、賠償請求されたとしても、大丈夫だと言っているんです】
ぜんぜん大丈夫じゃないでしょ……。
賠償金ってとんでもない額になるんだよね? わたし、お金持っていないし。
【請求先はギルドですから問題ないです】
でも『猫の眼』ギルドに所属しているわたしに請求が来るんだよね? 同じじゃない?
【いいえ、ぜんぜん違います。ギルドに所属しているということは、所属メンバーの不始末はギルドが責任を負うということです。仮に所属メンバーに過失があって、ギルドから強制脱退させられたとしても、加入中に起こった問題については、引き続きギルドが責任を負い続けることになるのです】
つまり今『猫の眼』ギルドに所属しているわたしがこの契約書にサインすると、責任は全部ギルドが持ってくれる、と?
【本人に支払い能力がなければ、ですけれどね】
なーんだ。
それなら余裕だー♪
「はいはい、サインしまーす♪」
さらさらっとね♪
あとは≪ニャンニャン姫≫に任せよーっと♪
【その変わり身の速さは……それはそれでどうかと思いますが……】
あんなに豪華な部屋に住んでいるんだし、あの財宝部屋! お金はたくさんあるんだから何の問題もないでしょ!
あー助かった助かった♪
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