第30話 クエストは、とりあえず上から10個ずつくらい受注していきます!

 AO2の世界にやってきて2日目の朝。

 昨日ギルドハウス内に借りた部屋を後にし、ギルドの受付に顔を出してみる。

 朝食はどこで食べるのかなーと。


「おはよーございまーす……」


「≪アルミちゃん≫さん、おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」


 受付のお姉さんがもう受付にいる!

 朝からお勤めご苦労様です!


「おはようございます! いやー、部屋の掃除で体がバキバキですよー」


 正直超眠いですわ……。

 昨日の夜遅くまで部屋の片づけに時間を使ってしまったので……。

 ≪サポちゃん≫はネコだし、ぜんぜん手伝ってくれなくて口を出すだけだし、結局全部わたしが重労働を担うことに……。


 なんかほら、大きな家具なんかはインベントリーに仕舞って運んで、「はい、リフォーム完了☆」みたいな感じにできないものかねぇ。


【それは昨晩も説明したじゃないですか。≪アルミちゃん≫に所有権のないものは、インベントリーに収納することはできないんですよ】


 はいはい聞きましたー。

 でもでも部屋は借りているんだから、そこにある備品は、実質わたしに所有権があるのでは?


【インベントリーに収納できるのは期間の定めのない所有権を有するアイテムに限ります】


 レンタルはダメってこと? めんどくさー。

 もうちょっと融通利かせてくれないかな?

 なんかこう、GM権限で。


【私はサポートAIの≪サポちゃん≫。GMではありません】


 その返しも飽きてきたなー。


「≪アルミちゃん≫さん、さっそくですが、クエスト依頼が来ていますので、目を通して受注をお願いします」


「えっ、もう⁉」


「はい。≪アルミちゃん≫さんは、ランクFですから、発注内容に戦闘行為が含まれない依頼全般を受けていただくことになります。最近新人冒険者の加入がありませんでしたから、わりと依頼が溜まっているんですよね」


 マジでー。

 それって雑用係ってことですかー。


「あれ? それなら一緒に加入した≪ピート≫くんは⁉」


「≪ピート≫さんでしたら、ギルマスから直接クエストの発注がありましたから、しばらくはそちらにかかりきりになると思います」


「ええ……。じゃあ雑用はわたしだけ? あ、もしかして、≪ピート≫くんへの依頼って、黒ネコ……じゃなくて黒豹のミミちゃんのお世話なんじゃ……」


「鋭いですね。その通りです」


 ですよねー。

 だってそのためにわざわざ勧誘してきたんだもんね。

 一般加入のわたしと違って、≪ピート≫くんは選ばれた存在……。


 いいもんいいもん。

 1週間でランクCまであがるもん! ね、≪サポちゃん≫⁉


【まずはランクEを目指しましょうね。1つずつコツコツと】


 数をこなせば実績として認められるかな?


【ランクE~F辺りのクエストは、質よりも量が評価されるのは間違いないです】


 だよね!

 じゃあ、いっぱい受注しよう!


「お姉さん! ランクFのクエストを全部見せてください!」


「全部ですね。はい、こちらのリストです。どうぞご覧ください」


 受付のお姉さんが、大量の紙の束を渡してくる。

 ずっしり。

 思ったよりもわりと多かった……。

 この紙の束からすると、10個や20個じゃないね。下手すると100個くらいは……。


「んー、全部見てたらキリがないなー。とりあえず上から10個ずつくらいに分けて受注していこうかな!」


 中身は何も見ずに上から10枚の依頼書を取ってお姉さんに渡す。


「こちらですね。はい、受注を確認しました。それぞれのクエスト達成期限に気をつけて対応をお願いします」


「はーい。かしこまりー」


 期限が大事。

 そうね、どんなに良い仕事をしても締め切りを破ったら全部パー。

 期限が近くなったらたとえ完成していなくても、クライアントに途中経過を見せてお伺いを立てる。これ、前職で学んだ大事なことです!


 じゃあ期限が近い順に並べ替えますか。


1.本棚の整理

2. 部屋の中で失くしたピアスの捜索

3. トイレの電球交換

4. 不在時の宅配物受け取り代行

5. ランチ会の間のベビーシッター

6. 犬の散歩

7. 夜逃げの準備

8. はじめてのおつかいの見守り

9. 床のワックスがけ

10. 庭の草むしり


 わたしゃハウスキーパーか!

 全部自分でやれ! 人に頼むな!


【そうなると、≪アルミちゃん≫へのクエスト発注がなくなり、ランクアップすることもなくなってしまいますが】


 わー、そうだった!

 わたしが全部やります! ニコニコ笑顔でよろこんで♪


 最初は『1. 本棚の整理』かあ。

 どこの家かな。

 はいはい、歩いてすぐだね。ちゃっちゃと終わらせちゃおう。


【その前に、お腹がすきませんか? まずは朝食をいただきたいです】


 そうでした。

 このまま出掛けるところだったよー。


「お姉さん、朝食はどこでいただけるのですか?」


 食堂の場所を教えてもらったりできるとありがたいですー。


「朝食……ですか? 大変申し上げにくいのですが……」


 あれ、なんかお姉さんが悲しそうな目を……。


「1時間前に朝食の時間は終了しています」


「ええっ⁉ まだ朝7時ですけど⁉」


「朝食は5~6時。昼食は12~13時。夕食は18~19時となっています。昨日通達したと思いますが」


 片づけに夢中でちゃんと見てなかった……。

 お腹減りました……。


「余り物がないかどうか、一緒に食堂に確認しに行きましょうか……」


 あまりの落胆ぶりに同情してくれたのか、お姉さんが魅力的な提案をしてくれた。


「ありがとうございます! 助かります!」


 お姉さんやさしくて好き♡

 何か余り物頼みます……。


【ネコ缶を……】


 そうね、≪サポちゃん≫の分のネコ缶もほしいね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る