第18話 時限式クエスト――残り2分の攻防

 わたしの涙を見て、ベテラン冒険者たちが激怒する。


「いい加減にしろよ! オレたちの街で誰に許可取ってポーションなんて販売してやがるんだ!」


「そうだそうだ! しかも≪ダレン≫さんの『魔法商店』の前で良い度胸だな!」


「≪ダレン≫さんにはいつも世話になっている!」


「おう、それに≪ダレン≫さんのところの≪ピート≫を誘拐しようとしているのか⁉ タダじゃすまさねぇぞ!」


 さてさて、良い感じに場が温まってきましたね。

 さあ、食いつけ。

 もしミミちゃんの誘拐犯なら何らかの反応を示すはず!


「本当に何も……。商業ギルド組合から正式に商売の許可はもらっているんだ……。でも場所を間違えてしまったらしい。すまなかった。ここの相場も理解できていなくてそちらのルーキーさんにも迷惑をかけちまった。お詫びをさせてくれ」


 真摯な態度で謝る店主。

 はい、想定通り。

 じゃあお詫びをしてもらいましょう。

 この後どう動いてくるのかな?


「お嬢ちゃん。こいつは詫び入れてきているがどうする? 騙されそうになったんだから、このまま俺たちが商業ギルド組合に連れて行って、商売の許可をはく奪することもできるぜ」


「か、勘弁してくだせぇ……」


 そっちのルートで誘拐犯であることを確定させる方法もありそう。

 だけど、わたしには時間がないの。

 クエストの残り時間は、もう5分を切っているから!


「そこまでしなくても大丈夫です! まだお金を取られたわけでも、≪ピート≫くんが誘拐されたわけでもないので! ね、≪ピート≫くん」


「う、うん……」


 わたしの後ろに隠れていた≪ピート≫くんを、あえて『移動ポーション屋』の前に晒す。

 この子が≪ピート≫くんですよ。間違えないように、しっかりと顔を覚えておいてね?


「2人ともすまねぇ。お嬢ちゃん、HP回復ポーションがほしかったんだろう。それだけとは言わず、MP回復ポーションも持っていってくれ。もちろんお代はいらねぇ」


 そういって、取引窓に現れたのは、初級HP回復ポーション100個、初級MP回復ポーション100個。代金0[SEED]。


「ありがとー! わたし、初心者だからお金があまりなかったのー。助かるー♡」


 またポーションたくさんもらっちゃった♪

 これで当分の間、冒険の時ポーションには困らなそう!


「それから≪ピート≫くん、だったな……。キミにはこれをあげよう」


 と言って『移動ポーション屋』の店主が≪ピート≫くんに、何か金属の破片のようなものを手渡した。


「おじさんこれは何?」


 ≪ピート≫くんの手のひらの上に乗せられているのは、やはり金属の破片だ。

 何か読めない文字が刻まれている?


「おじさんの故郷に伝わるお守りだよ。『健康で頭が良くなりますように』という願いの言葉が彫られているんだ」


「ありがとう! ボク、健康で頭が良くなるよ!」


 ≪ピート≫くんはお礼を言ってから、うれしそうに金属片を握り締めた。

 何らかのマジックアイテムだとは思うけど……。


 ≪サポちゃん≫アイテム鑑定とかってできたりする?


【≪アルミちゃん≫の取得したアイテムの鑑定は行えます】


 つまり、≪ピート≫くんの所持品はできませんよ、ってことね。

 残念。


 でもこの金属片……めちゃ怪しい。

 今のところ、クロともシロとも言えないけれどね。

 でもまあ、もう時間もないし、こっちから仕掛けるしかないかなあ。

 ホントは協力者をお願いする時間があったら良かったんだけど、もう残り3分。やっぱりこのままわたし1人でやるしかない!


「じゃ、じゃあわたしたち、急ぐ用事があるので行きます! みなさん、助けてくれてありがとうございました! わたし、この街が好きになりました♪」


 精一杯の笑顔を振りまく。

 やさしいおじさんたち、この後も私のことを助けてね♡


「お、おう。お嬢ちゃんも気をつけてな」


「困ったことがあったら何でも言ってくれ」


「ルーキーの世話をするのがベテラン冒険者の役目だからな」


 みんなキリッとした表情を見せてくれる。

 さっすが、ベテラン冒険者はかっこいいなー、なんてね♡


「バイバーイ。ほら、≪ピート≫くんも挨拶してー」


「バイバイ! おじさん、お守りありがとう!」


 わたしは≪ピート≫くんの手を引き、あえて街のはずれのほうへ。人気のないほうへと足早に進んでいく。


 これであの店主がシロだったらもう時間切れ。クエスト失敗だ。

 でも、たぶん合ってるはず。

 『魔法商店』を出て、9分でできることは限られているし、ほかにクエストに関係しそうな違和感は発見できていない。


 残り2分。

 頼むぅぅぅぅぅ!



「おい、ルーキー。ケガしたくなかったら、その子を置いてとっとと失せな」


 かかった!

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