第6話 『可愛い』と『美しい』

 突然だが、みんなは『可愛い』『美しい』という言葉は、どんなときに使うだろうか。

 僕は、本当に思った時はもちろん、少しタイプかもと思った女性に使うことが多い。


 今回はそんな僕の『可愛い』『美しい』という言葉の使い方を改めるきっかけとなった出来事の話だ。


 ゴールデンウィークが終わって最初の登校日。

 この日は休み明けということもあって、五時間授業だった。

 そして、休み明け最初の登校日ということもあって、教室ではゴールデンウィークの思い出話が繰り広げられていた。

 ちなみに、僕のゴールデンウィークの思い出はというと、『高山市にあるへ行ったことや富山県で美味しい食べ物を沢山食べたこと』だ。

 他の人たちはというと、


「クラブがあって、あまり遊べなかった」


という人が多くて、僕みたいに休みを楽しみ尽くした人は、ほとんどいなかった。


 そして、気になった人もいるであろう『先生の家がやっているお店』というのは、高山市にあるスイーツのお店だ。

 現在は、先生の両親が経営をしているらしい。

 でも今回のゴールデンウィークに、そっちに帰って先生がお店を手伝うらしい。

 なので、ゴールデンウィークが始まる前に


「もし時間がある人は、来てください」


と先生が宣伝していた。

 ちょうど富山県に出かける予定だった高橋家は、行きにそのお店に寄った。

 『高山市にある先生の家がやっているお店』のエピソードは、これくらいだ。


 次に今回の本題である、『可愛い』『美しい』という言葉の使い方を改めるきっかけとなった出来事について話そう。

 それは、家族で富山県に行って、ご当地ラーメンである『ブラックラーメン』を食べた話を美羽たちにしたときのことだ。


 給食を食べ終わり、僕は自分の席から先生とゴールデンウィークに何をやったかを話していた。


「春希くんはあの後、どこ行ったの?」


 先生が僕にそう尋ねた。


「あの後は、富山県に行ってブラックラーメンを食べました」


 僕が笑顔で(ニヤけながら)そう言った。

 そうすると、隣の席の美羽が話に参加してきて、


「なんでそんなニヤついてるの?」


 そう尋ねてきた。


「そこのラーメン屋の店員さんがめっちゃよかったんだって。可愛いというか美しいというか」


 僕は、またも笑顔で(ニヤけながら)そう返した。

 そしたら、僕の発言に対して美羽が、


「そんなさぁ、出会ってすぐにその人がどんな人かなんてわからないじゃん」


と美羽が言った。

 その考えに対して、


(確かに、全く美羽の言う通りだ……)


 そう思った。

 容姿が良かったとしても、その店員さんとはそのとき初めて会ったし、中身の部分までよく知っている訳でもないのに、『可愛い』だの『美しい』だのと褒めるのは、確かに違うなと思った。


 僕は美羽の一言を受けて、これから『可愛い』や『美しい』という言葉を


『美羽以外の女の子もしくは、女性には簡単に使わないようにしよう』


 そう思った。


 つまり今回の出来事は、僕が『可愛い』『美しい』という言葉について、よく考えるきっかけになって、使い方を改めようと思えた大切な機会だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る