第28話【補足話】竜姫の小さな旅路

――竜姫 視点――


 私は竜国の公主、竜姫ロンキというものだ。

 人間種の8分の1スピード。竜人1匹を成人に出すまで、160年かかる。

 それに、竜人の女子は竜国で凶事を招くとされ、生まれた直後に殺される。

 白い肌、黒髪、黒瞳、白と黒で目立つ色ではなかったので、私の生まれたとき、女の子とわかり皇族は落胆した。


 私の父である竜帝は、長い人生に飽きてきたらしく、女性を囲って子供を作ってしまったらしい。

 その物好きな父、竜帝は私の右脚を掴み、床に投げ捨てた。でも、死なない私を生かすことにした。

 竜類憐みの令。勅命により役人は法律を作って、私が生きられるように、国を変えた。


 私は仏門に入ったが、頭がよく、運動神経も並み以上だった。

 三蔵法師のように、慈悲深く許しの心を持つことはなかった。

 簡単に言うと、大人から与えられる試練がつまらなかった。

 学業も、運動も、他人とは比べられないレベルにあると、高僧が言っていた。


科挙しけんを受けてみますか?」

「そうだな。皇族や役人の奴らをビビらせよう」


 科挙は合格した。それも上位3名のうち1人になってしまった。

 竜帝は大爆笑した。

 隠れ受験の合格者が、私と分かると役人は合格を取り消しした。


 何だか、ムカついたんで、この国で一番強い軍の演習にこっそり入った。

 まぁ、その軍隊は実兄の竜氷リュウビンが率いる黒竜軍だった。

 竜氷リュウビンは私に気づいて、功夫の師範を私に紹介した。

 単純に実兄は、身内がいると士気が下がると言った。


 功夫は楽しかったが、長続きしなかった。

 黒瞳が真っ赤になる。

 覚醒してしまうと、私が相手を病院送りにしてしまうのだ。

 功夫の師匠は、舞竜ウーロンと私の力を評価した。そして、隣国の内乱へ私に加勢してはどうかと言った。

 島国の士ノ国、和楽わらくと後に呼ばれる国は、西ノ君の軍と東方大将軍の兵らが争っていた。

 だけど、東将府が東方賢者オライントに東方大将軍の位を渡したため、劣勢だった東軍が押し返していた。

 さっさと戦を終えないと照国アントリアに干渉を受けると、竜帝は私を含めたエリート兵を西ノ君へ援軍で送った。


 魔法で丈夫さを上げていると気付いた私は、西ノ君の軍から東方大将軍オライントの軍へ寝返ろうとした。

 裏切りというより、強いやつが親分の方が私としても動きやすい。

 そこで竜国から共に渡った仲間と戦うことになったが、全滅させた。

 だけど、西ノ君の軍勢は寝返ろうとしていた私を止めに来なかった。

 うん? 

 いったん冷静になって、私は調査してみた。


「なるほど。西ノ君と東方大将軍は、和解に至ったか」


 エリート兵を派遣する竜帝の圧力、アントリアの干渉、それで士ノ国は戦争する余裕がなくなったのだろう。

 私は大人しくしていたら、東方大将軍オライントに実力を買われて配下になった。

 アルビオンとの同盟を結ぶ、席で通訳をした。

 それを見ていた東方大将軍オライントは、私の強さと賢さが異常なことだと言う。


竜華ロンファ、お主はわしより強く、わしより賢い。そういう輩は隣におけぬ。アルビオンとの交渉も上手くいきそうじゃ。東エンドラへ渡ってくれぬか」

「はい、師匠」

「わし以外に、己より優れた師匠を見つける頃には、お主も大人になるであろう。強くなって戻ってこい。」


 笑顔で東方大将軍オライントに見送られた。


 東エンドラは、アルビオンの植民地であった。そこでの暴動は激しく、大小規模は様々であった。

 私の精神は削られ、はじめて不眠を経験した。

 東方大将軍オライントに手紙を出したら、今度はアントリアの竜騎兵へ参加して、ドラゴンの暴走を止めてこいと言われた。

 まだ師が見つからない子供だったこともある。


 約12年前、ホランズ沖海戦に現れたレッド・ドラゴンを捕縛することに成功した。

 ただ、仲間はかなりの人数亡くなった。

 竜騎士のアゼルという男は、目の前の小さくなった竜を保護したいと私に言う。


「お前、こんなに小さかったっけ?」

竜姫ロンキ殿、竜は戦争を引き起こす。四大都市同盟としては、この竜をアルビオンやフランシスに引き渡せぬ」

「それは、あんたの願いか」

「あぁ、竜を隠す。この戦争で、あまりにも壮絶な死を見過ぎた」


 フランシス海軍の艦隊が壊滅。時のフランシス王まで戦死したらしい。それに四大騎士同盟の有名な傭兵たちが次々と戦死した。

 ドラゴンの火炎放射は、大量の魔力を吐き出したわけだ。

 だから、小さい竜になった。


 これも縁だろう。

 私はアゼルの要望に賛成した。

 仕事を失ったため、アゼルの伝手で、マジャの鉱山監督となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る