第44話 和楽 西域・浪華 ヤクザとブラウニー
酒癖の悪さ。
リータさんは、酒を飲んでいる間の記憶がないと言う。
西域の
用事があるから、と別行動をしている
リータさんの次いで、だと思うけど、怪しい魔女の恰好をしている私も連行された。
警察であれば、留置場だ。しかし、ここはどう見ても倉庫の中だ。
リータさんの名前を呼んでみたけど、どうやら同じ場所にはいないらしい。
両手は背中側で拘束されている。両足にも枷がかけられている。
「これって新しい魔女狩り?」
私の声に反応したのは、私の魂だ。
私の知らない過去の光景が見える。
『私の首1つで国が救えるなら、喜んで行きます』とドレスをまとった妃、『私』は薄っすらと笑った。
知らない『私』2人目だ。その彼女の目の前には、赤い液体がついた断頭台があった。
私は死にたくない。魂が死の方へ引きずるとしても――
「私は貴女と違う! まだ私は生きたいの!」
その声に反応して、床を転がり、両手両足をバタバタさせた。
怖い人たちは誰も来ない。静かすぎる。
すると、頭巾と面頬、黒い忍の装束をしたニンジャが私の両手両足の枷を外した。
金属で鍵が必要なはずだが、特殊な工具を使わず、すぐ外れた。
座ったまま、私は顔を上げる。目の前の彼は表情に何も出さなかった。
私よりも身長が低いながら、この
「また1つ、ヤクザの組合を潰せた。それは良し、だ。しかし、まぁヤクザに注目されるとは、厄介な
「殿下、私はこれにて、お先に失礼いたします」
「あぁ、よく探し出してくれた」
殿下と呼ばれた彼に、お辞儀をして、
誰だろうと考えながらも、私は彼にお礼をした。
「ありがとうございます。魔法使いの見習いのマリィと申します」
「ずいぶん、
「えーと……それは……どうなんでしょう」
「分からないなら別に構わない。私は軍人のミカサだ」
彼が手を差し出してきたので、私はそれを受けて立ち上がった。
外に出ると、ヤクザの組員が全員倒されて、完全制圧されていた。
そこにアルトを左腕に乗せた、
「よぉ、無事か。マリィ」
「おかげ様で助かったわ」
「目が虚ろだぞ。具合悪いのか」
「少し、前世が見えちゃったかな。頭の誤作動が起きて、私じゃなくなる。だから、これ好きじゃないの」
そこで私は、手が震えていることに気づいた。ミカサさんは
アントリア地方では、
「ミカサは由緒正しき、
「リータさんは無事ですか?」
「大丈夫だろ、な?」
ミカサさんは首を縦に振った。
何となく私に視線が向いていて、少し怒っているように感じた。
その心のうちを明かした。
「マリィ殿、魔力の気が私と接触している。今すぐ修行を開始した方が良い。ヤクザ如きに捕まることもないだろう」
「私は……」
「
「修行って、何をするんですか?」
「君の心臓の位置、そこが魂の宿る場所とすると――」
ミカサさんは私の心臓の位置を指さした。
「――頭には魂がいない。意識を心臓に集中させるんだ」
「これで、魔力を調整できるんですか。別にいる『私』たちの魂と分かり合えますか?」
「うん、今、魂が振れた。集中して、おへその上に力を込めて。鼻から息を吸って、口から静かに細長く息を吐く」
言われた通り、やってみる。これで何か分かるのだろうか。
両手で三角を作る。おへその上、丹田に力を込める。
ミカサさんは口を開いた。
「センスはありそうだね。シノビの里で修行してみるかい」
「ニンジャですか?」
「そうそう。相棒のアルト君と一緒にしてみないか」
「時間がかかりそうですね」
「いいや、君の才覚なら2~3年で足りるよ。今、魔力制御をやっておけば、いずれ通る道に迷いがなくなる」
私は悩んだ。
お師匠クロウドさえ、私に教えてくれなかった。いや、教えられなかったのかも。
垂れ流していた魔力を丹田に集中させて、親指大のサイズを目指す。
でも、今の私が魔力制御で、魂が少なくとも3つに分裂しているのを何とか出来れば、お師匠も心配しなくなるだろう。
私とアルトは、紀ノ国のシノビの里で修行に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます