第41話 フランシス領コーチム~竜国(海竜・南竜) 竜の住処<3>

 海竜は、川の河口デルタ地形といくつかの島からなる土地だ。

 アルビオンの資本により、本土より上手く金融機関が動いている。そして、大型の貿易港を持つ。

 東亜トンヤの十七商会により、世界貿易が成功している大きい街だった。

 頭の上に複耳をもつ一般人が多い。猫人間、犬人間など、だ。

 ついで人間種だ。エルフ種は少ない。


 私たちは喫茶店に入り、外のテラス席で、南王の竜雨ロンユさんを待った。

 ふと、太陽の光が消えて、真っ暗になり、風が吹いた。

 きゅー、とアルトが鳴いた。だらーっと、竜姫ロンキは椅子に座っていた。


「相変わらず、兄貴は図体でかいな」

「そういうお前はその座り方、態度がでかいぞ」

「……ただいま」

「おかえり、竜華ロンファ


 すでに太陽の光が戻り、風は消えた。

 あの影は竜が飛んできたから出来たものだった。

 その竜は、今、目の前で2メーター超えの人型になった。何処となく、青白い肌色をしている。薄青い長い髪を束ねている。目の色は竜姫ロンキと同じく、黄色がかっている。服装は国民服だ。

 彼が南王の竜雨ロンユさん。権威あるブルードラゴン種だ。


「きゅっきゅ!」

「おお、これはアルトゥス先生。お初にお目にかかります。私は竜華ロンファの実兄で、竜国の南部を治める王の、竜雨ロンユと申します」


 アルトが鳴くと、南王・竜雨ロンユさんは、拱手礼で歓迎の意を伝えた。

 私は次いで。

 私は目を背けて、紅茶のカップに口をつけた。

 竜雨ロンユさんは、私に微笑みかける。


「お連れの方は、魔力の量が常人域でないですね。もしや、大魔法使いマリン殿の一族の方でしょうか?」

「いいえ、マリン様とは違います。私はマリィ=レヴィです」

「それは、申し訳ないことをしました。ごめんなさいね」


 エレンさんにも、マリンの生まれ変わりだと言われた。

 魔法が使えない私が、マリンのわけないじゃない。少しの怒りを隠すため、硬い口調になった。

 竜姫ロンキが彼女の実兄に注意した。


「兄貴、マリィは怒ると、口を聞いてくれないからなー」

「それを早く言ってくれ。しかし、彼女の服装が魔法衣なのに、マリン殿の名前を出すのはダメなのかい」

「マリィは、魔法が使えないんだって。そんなんで、大魔法使いマリンと比べられるのは、嫌でしょ」

「うーん、確かに。最近、よく耳にする魔力障害か。内在の魔力過剰による、魔法出力が不全になるという」


 竜姫ロンキに私はフォローされた。

 改めて竜雨ロンユさんは、私に声がけた。


「マリィ殿、高濃度の魔力が体外へだだ漏れになっています。このままでは、自身の魂が死滅するか、もしくは暗部の魔法使いに見つかり厄介なことになりましょう」

「そんなに深刻な問題なんでしょうか」

「かなり……厄介な問題かと思います。魔力計測器で計ってみましょう。出来れば、最高の魔法使いオライント殿にも謁見したいところです」

「えーと、私、どこへ行くんですか」

「まずは我が領地の南竜へともに参りましょう。うちの妹の成人の儀がてら、マリィ殿の魔力計測をしてみましょう」

「ええ、お願いします」

 

 目に見えない私の魔力を竜人の2人は感じているようだ。

 他人に痛みを与えるのであれば、薬師を目指したあの頃と同じく、魔法は使いたくない。

 しかし、魔力が漏れるほど、であるなら、敵に察知されるのも早い。

 ブラウンが盾になって、私は助かった。

 やっぱり、心のどこかに棘が刺さっている。


 私たちは馬車で海竜から南竜の街へ向かった。

 南王の竜雨ロンユさんは、竜の姿になると、空を飛んで行った。

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