第26話 マジャ 廃れた炭鉱と借金<4>
それはそれとして。
アルトを師と呼んだ理由を私は
「アルト様なら、師匠の
「アルトは子供だけど……」
「いいや、子供の竜じゃない。第二次ホランズ沖海戦で現れた竜がアルトだ。今は魔力回復のために小さくなっているだけだぞー」
私は大人がついた嘘にようやく気付いた。
魔力のほとんどを費やした、弱くなったアルトを自由に出来たのは、私が相棒を求めていたからだ。
アゼルさんに上手くやられた。
「アゼルさんは竜の子供だって」
「あ……隠密な話だったけど、今はもういいかー。竜騎兵のアゼル=ジークフリードに、私がアルトを預けた。人間の感覚だとそこそこ昔になるのか」
「どうして、傷ついたアルトの傍にいてあげなかったの?」
「怒るなよ。アントリアの国家大戦を竜国へ持ち込むわけにはいかなかったんだよー。世の中がようやく少し落ち着いたから、アルトの方から私に会いにきてくれたんだって」
アルトを蔑ろにする
今は丁寧な言い方なのに、昔、アルトに助けが必要なとき、無視した。
うーん、いいや違う。
建前、本音、今はそんなのどっちでもいいのだ。
アルトが師で、
ただ、それだけ。
もうこうなったら、アルトの次いででいいから、東方賢者に会いにいけないだろうか。
「
「なんだい。お姉ちゃんは、魔力障害を頭か身体に持っているのかい」
「そう。翻訳魔法の代償で障害を頭に持っているわ」
「お姉ちゃん、それは大変だなー」
「ようやく国家薬師になったのに、もっと私、今、大変なことになっているの。アルトの次いででいいから、私も極東の国へ連れて行ってくれないかしら」
「あぁ、お姉ちゃん、薬師かい。
あっけなく、東への旅路が決まった。
口も態度も悪いが、竜姫は先を見据える度量があった。
それさえ分かっていれば、この才女と意思疎通することは、それほど難しくない。
相手はオットー商人のパンサ。それを見て、
「大量の
「極東へ向けて、オットーの商船を動かしてもらえないかしら」
「確かにオットーのパンサには、それくらいのツケはあるかもしれないな。あいつとの話次第だろうさ」
パレスでの貧乏生活のおかげで、私はお金のやりくりが上手くなっていた。
それでも、戦地では買い物さえ上手く出来なかった。
ここの人たちは、お金のやり取りがガサツすぎる。
戦争地では治安も悪くて、真っ当な商売にならないってか。
早々に、この地を離れたい。
―――
あくる日。
ラヴィ鉱山の閉山が近いこともあり、オットーとの商売、借金にも目途をつけなければならなかった。
鉱山労働者たちが、リザードマンの商人と口喧嘩していた。
給与を払え。フランシス側が払え。オットー側が払え。もはや、誰からの仕事の依頼か分からなくなっていた。
そのリザードマンの商人がパンサさんだったのだ。
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