第3章・下 全世界言語理解能力

第17話 レオニア王国同盟バルテナ・下 全世界言語理解能力<1>

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 クロスト教徒、特に、レオニア半島の国土回復運動レコンキスタは有名な話だ。

 それは、中世から何世紀もかけたクロスト教徒による戦いだった。

 当初の運動では、魔族を撃滅した。

 次の敵となった異教ガダ教の民にも、この運動が引き続き南方圏メリドへ追い返した。


 つい最近まで、アントリア中央部から北部では、アルビオンとフランシスを中心に、第二次百年戦争をしていた。

 それは、私も関係するフランシスの民なので、知らないことはない。

 両国の板挟みになっていたハイネス国が気づかないうちに産業技術を高めるくらい、長い期間の大戦争だった。

 国土・属領・貿易などの全てにおいてアルビオンとフランシスは、夢中になって2国の間で足を引っ張り合ってきた。


 一方で、アントリア南部では、中世のいつ頃からか異なった2つの宗教が対立していた。

 西のクロスト教と、東のガダ教だ。これを、クロスト・ガダ戦争と俗に言う。

 第二次国土回復運動レコンキスタによりクロスト教徒側が、ガダ教徒をレオニア半島から追い出した。

 それでも宗教同士の争いは終わらず、クロスト教皇の影響範囲やマジャ地方での両者の戦いは小規模ながらも続いていた。

 武力を持たないクロスト教皇を支える諸侯たちの私兵団だけでは、ガダ教の軍事力に歯が立たず、常勝の西方十字軍と呼ばれたレオニア軍が支援を続けていた。

 当然、レオニア王国同盟の下の貧困民たちは、先祖の代から終わらない戦争にかかる軍事費のうち、クロストの民としての負担金に反抗活動をする有り様だった。


 さらに、話をややこしくしたのが、時のフランシス王レオン1世である。

 第二次百年戦争の形勢を変えるべく、レオニア王国にあの手この手で圧力をかけ、 隣のプルトカ王国もろともレオニア半島を支配下にしようとした。

 面倒くさいことに、アルビオン連合王国の軍隊はプルトカ王国を解放する作戦に成功した。


 時が過ぎて、レオン王のフランシス軍が完全に退却した。

 新しく王が即位して、レオニア王国は軍事費の工面を何とかしようとしていた。

 財政面が危機的状況だった。このままでは、国として財政破綻する未来が見えた。

 新興国のフロンティア連邦へ貿易拠点としていた属領都市を売却するなど涙ぐましい苦肉の策をして、お金を工面していた。


 ただ、マジャ方面のクロスト・ガダの争いは、小康状態のままで維持だった。

 だからと言って、派兵していた西方十字軍を帰国させて、各地の暴徒鎮圧をする計画も資金も、当時のレオニア王家には足りていなかった。

 約千年間、反骨精神を高めたレオニア半島に住むクロスト教徒たちは、一括りのレオニア人と言われると激昂すると、私は聞いたことがある。

 北部ビスコ地方、北東部カタロン地方、南部アルダラ地方は、もはや誰にも従わない姿勢で独立運動を展開している。


『クロストの民は今の借金をなしとする』


 そんな中で、フランソワ・レヴィ家の錬金術師サージェが宣言したのだ。

 お金に困っていたレオニア王家は、苦渋の協議の末、魔王サージェに王位を禅譲した。

 代々、貧困に苦しんできたクロストの民は、長年の借金がゼロになるという夢を見せられ、歓喜の声を上げた。

 先に名前をあげたレオニア半島の3地方と、元々、独立していたプルトカ王国以外の地域は、魔王サージェに名目上従った。


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