第15話 レオニア王国同盟バルテナ・上 薬師と聖女と魔王 <4>
午後の陽射しが傾いてきた。少しだけ風が冷たく感じた。
地中海の温暖な気候とは言え、まだ春なので、夜に向かうにつれて気温は下がるだろう。
このバルテナの街は、聖家族教会の方まで行ってしまうと、港の方まで歩いて戻らないと
「きゅーッ!」
怒ったアルトが、私のお尻にかじりついた。
うぇーん、相棒、許してぇ。
私はヒリヒリとするお尻を手でさすって、道の先を歩く2人を追う。
この世界は、ようやく平和時代に戻ってきた。
自国の技術革新を見せ合う『
一方で、オリンピックの開催は、4年の周期で1か国もしくは
国家間の戦争で恨みの連鎖を続けるより、国際的な平和の祭典を周期的にした方が、人類の成長にとって私は良いと思う。
「バルテナ
「フロンティア帰りのフランシス人には、最新の生活をする上で、私もお世話になっているわ」
「えーとぉ、それからぁ~。古い話ねぇ、レオニアの割譲地だったサンフランコを、フロンタル人が最先端の技術を駆使して、規格外な巨大都市に進化させたのよぉ。変態の極みよ、もぉ~!」
「……」
「だからぁ、勝てる方法でバルテナ
「……」
魔王サージェ曰く、バルテナの都市は急ピッチで区画再編されたらしい。
歴史的建造物を際立たせるために、前王家が都市計画したものを引き継ぎ、偽王や魔王とレオニア国民に罵られながらも彼が進めていた。
大人になりかけの私にはまだ、大きいことがよく分からない。
けれども、実際、目の前に広がる街の景色で分かることがある。
緑の街路樹と小さな公園や
白っぽい石壁と温かい色の煉瓦屋根という家々だ。
やや斜めを向いた全体配置の街は、光と風の流れを読んでいるようだ。
あ、そうそう。ついでに、
道の交差点に中庭的なスペースがある。1つの
余分な空間、その意味を推測する。
住む人や物の過密を防ぐことができるだろう。
また、下水道などの
さらに、他人との会話する場所が自然と出来るだろう。
この3つ以上に、街が住みやすいと思うような仕掛けがあるのだろう。
はじめて視る街に、私はどこか懐かしさを感じた。
私は
魔王が一生懸命に話すけれども、徐々に私は上の空になっていた。
そこで、ガラハさんが穏やかに、私へ話しかけた。
「フロンティアの都市のように、新天地の生活困難を解消するため、人が必死に考え出した新しい技術を使った街並みも素敵だと思う。最新の
「なるほど、人類の英知が結集ね」
私もフロンティア連邦の街を一度見てみたい。
フランシス王国の都市がフロンタル化していくなら、本場を見ておくのは大事なことだろう。
それはそれとして。
聖女殿下ガラハさんは、柔らかな眼差しだ。
ガラハさんの聖職者という立場からは、私とは別の見方があった。
「反対に、
「
「うふふ。クロスト教徒の国って、不遇を乗り越えて強く生きる歴史の力を感じるものよ。さぁ、サージェ、あなたは喜捨して私たちに食事を提供しなさい!」
「魔王と聖女の関係性が、まだ私には分からないわ」
結局、大人らしい考えにまとまらず、私は困った顔をした。
魔王サージェは変な顔をして、お道化て笑った。
歴史、技術、文化、宗教と民族性など、そんな概念だけじゃ、聖女も魔王も、私ごときに理解することは出来ない。
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