第3話 喰わせ者 視点17

「あのエルフどう見る?」


あーしが加入する事になった[鋼鉄の鍋]のリーダー、ドワーフのディッツさんが、しわがれた渋い声で私達に尋ねてくる。

あーし達はつい先日[森の若木亭]の店主の紹介で知りあいパーティを組んだばかりだ。


「竹を使った複合弓エルフボウに精霊の気配、典型的なエルフとみたが……。」

竜人剣士のさんが見た感じを答える。


「き、綺麗な方でしたね。み、見た感じでは男性か女性かわからない方ですが、多分女性ですよね。」

大地母神の下級神官、ペプシさんが素直に感想を述べた。


「あーしが見た感じではね。知ってて黙ってた喰わせ者。イカサマしている客と同じ顔してた。」


「後、お金は持ってるよ。金貨が擦れる音は他と違うから。」


あーしは気が付いたことを述べた。

髪を弄るふりをしていると、みんなには、やる気がない様に見えるって、あーしは知っている。


「依頼に反対する者は?」

ディッツさんの確認に皆、首を振った。


「なら決まりだ。」


怪しい依頼人でも、払いが良いならギリギリまで目を瞑る。

そして生きるか死ぬかの狭間を駆けるのだと、カジノで知り合った冒険者から聞いた事がある。


「あのエルフが依頼を取り下げない限り受けてくる。」


あーしも冒険者になったからには、生死の境を、しかない。

少し前までは予想だにしなかった事だけど……。


☆☆☆


それぞれ別に[森の若木亭]を訪ねた、あーし達は女性3人でパーティを組む事を勧められた。

そして冒険者としては素人の、あーし達にベテランドワーフを付けてくれると店主はいう。


[おのぼり]が比較的同郷で組まされるのは知っていたから、その田舎者達に組み込まれるんだと思っていたが違った。

考えて見れば同郷者に異物を入れても上手く回らないのだから当たり前だ。


しかし、あーしらは運が良い。

あてがわれるのがドワーフだからだ。

新米冒険者の女3人と組むのに、人間のベテランだと、男ならハーレムと勘違いするだろうし、女だと大抵は口やかましく面倒くさい奴になる。

その点、ドワーフなら問題なさそうだ。


もちろん、パーティを組んだ後、調べられる事は調べた。


どうやらロートルドワーフは昔は腕が良かったが、最近は何とかギリギリ食べている様だった。

グリフォン討伐失敗で昔からの仲間を失ったのが転落のキッカケらしい。


聖王国や魔族との繋がりも噂されていたが、あーしの勘では、そこは深堀りすると死ぬ。

直前の仲間は、ダークエルフと女傭兵と女偵察兵。

ダークエルフと女傭兵は妖魔族に引き抜かれ仕官し、女偵察兵は変死している。


ロートルドワーフは大金を掴んで引退したいんだろうけど、働かなきゃ生きてゆけないのが生き延びた冒険者の末路。

引退出来る位の大金はあーしも欲しいが、無理をすれば冒険者は死ぬ。

あーしは引きずられない様に気を付けよう。


☆☆☆


「エルフの仕事を受けると決まった。前金等の資金管理だが、パーティ資金制にするか、個別管理にするかどうする?」


パーティ資金制の利点は冒険が上手くいかなかった時の保険になるし、人間関係が、しっくりこなくなっても資金精算までは同行する動機になる。

だが、報酬の一部を提供する為、手取りは減る。


個別管理の利点は手取りは増えるが、失敗は自己責任。

人間関係で依頼途中なのにパーティから抜ける者がなどが出る可能性が残る。


「あーしは取り敢えず個別管理。手持ち少ないからね。」


半分は嘘だ。

確かに手持ちは少ないが、資金管理者を自分以外の誰かに出来る程、みんなを信用していないのが理由になる。


「パ、パーティ資金制の方が安定します。」

必要なら神殿で稼げるペプシは手持ちに余裕がある。

それに基本善人だ。


「此度は個別管理。手持ちが厳しい。」

竜の島から来たはペプシが食事を奢る程に金がない。


「2人反対なら、個別管理だな。前金の金貨1枚づつ。経費込みだから最低限の食料や装備は自己負担。」


「17、しなの、明日中に最低限の防具は買え。ペプシは薬草類を神殿で買って金額を報告しろ目安は1人2枚の銀貨8枚まで。金額は頭割りにする。」


明日の夕方に改めてエルフからの依頼内容の説明があるそうだ。

明日はと市場の防具屋を覗こう。


しかし、あーしが防具を買うなんて前の店の仲間はウケるだろうな。

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