第2話 面談 視点依頼人

絹布エルフシルクの買い取り見積もりは金貨20枚。手数料10%で2枚貰うから18枚どうするかね?」


 商談スペースで絹布エルフシルクを渡した後、四半刻30分待っていると店主が入ってきて告げた。

まずまずの評価だ。


「それで良い。11枚は依頼に使うから残りを現金で。3枚分は銀貨で欲しいがレートは1対30で良いだろうか?」


 店主は了解すると、金貨4枚と銀貨90枚を袋に分けて持ってきた。


「[冒険者ギルド]に口座作れば現金を持ち歩かずに済む。年で銀貨1枚の管理料かかるが初年度はサービスだ。あんたは特徴あるから、なりすましも効かんし、どうだ?」


 私は丁重に断った。

もし冒険者になるなら考えるだろうが、使命を果たして里に帰る気でいるから、金は使えなければ意味がない。


「後、斡旋したい冒険者の候補だが[鋼鉄の鍋][花六][稲妻の剣]ぐらいだな。」

そう言って簡単なメモ書きを3枚渡され   る。


「冒険者にゃ内緒だが、[冒険者の店ギルド]内則に当てれば[鋼鉄の鍋]がFランク+、[花六]がEランク、[稲妻の剣]がDランクってところだ。」



 [鋼鉄の鍋]4人

ドワーフ戦士♂、竜人剣士♀、偵察スカウト♀、下級神官♀

ベテランドワーフが率いるパーティ。


 [花六]6人

軽戦士♀軽戦士♀軽戦士♀重戦士♀偵察スカウト♀助祭♀

重戦士を中心にした同郷者パーティ。

商隊護衛など実績あり。


 [稲妻の剣]3人

剣士♂魔術師♂司祭♂

剣士を中心にした若手のホープ。

護衛、討伐など実績あり。



 まず、男だけのパーティは却下。

実力はありそうだが、旅の途中も気が抜けなくなるだろう。

魔術師が居るのは惜しいが、私も魔術が使えない訳では無い。


 残るパーティは2つ。

これは一長一短に見える。


 女だけのパーティは軽戦士が半数占めるから、[おのぼり]と言われる経験浅いパーティの可能性がある。

実績が商隊護衛なのも、それを示しているのだろう。

だが6人と人数がいるのは心強い。

なんと言っても数は力だからだ。


 ドワーフのいるパーティは、そのドワーフが問題だ。

ドワーフは妖魔族ダークエルフと通じている信用ならない種族で、里では薄汚い裏切り者と学んだ。

半面、冒険者という汚れ仕事には向いている種族でもある。

戦闘に優れる竜人族がいるのも利点だ。

ただこのパーティだけ実績記述がない。


「気に入らないなら、斡旋依頼はやめて、報酬と募集内容を明示して張り出す公開依頼にするかい?あんたの依頼なら、すぐにでも応募あるだろう。」

考え込む私に店主が声をかけてくる。


「公開依頼にしたら、このパーティ以上の応募はありそうか?」


「それは分からんな。ただ[おのぼり]が殺到するだろう。捌く面倒考えたら俺なら止めとくね。」


 自分から言い出したにも拘らず肩を竦める。

なかなかの喰わせ者だ。


「[稲妻の剣]は断る。[花六]は[おのぼり]、[鋼鉄の鍋]は新設パーティだろう。もう少しなんとかならないか?」


 もう少しマシな冒険者を紹介しろと促すが、店主は首を横に振る。


「[稲妻の剣]はあんたを気にいってたようだから残念だ。」


「そうだな、会ってみるか?[花六]は治安傭兵依頼を受けて街中をふらついているから夜にならないと難しいが、[鋼鉄の鍋]は宿にいる」


 私は冒険者との面談を頼んだ。


☆☆☆


「儂はドワーフのディッツ、見ての通り戦士だ。」


「あーしは17。偵察スカウトだよ。」


「しなの、双月流刀術を修めている。」


「か、下級神官のペプシです。」


 小部屋で引き続き待っていると、店主が冒険者達を案内してきた。


「私はフールと呼ばれている。学術調査の護衛を探しているのだが、勝手がわからない。店主に斡旋を頼んだら君達を紹介された。」


 それだけ話すと、店主が後を継ぎ依頼内容や報酬を説明し始める。

こちらが相手を見る様にドワーフと竜人は私を観察している様だ。

下級神官は店主の話に聞き入り、偵察いや盗賊は髪を弄りながら、あたりを見渡している。


 老練なドワーフは別として、竜人は格が違う。

不用意に間合いに入れば斬ると言わんばかりの強い気配だ。

味方になるなら心強い。


 下級神官は実直そうで、悪くいえば単純そうに見える。

依頼を受ける気は一番ありそうだ。

騙される事はあっても、騙す様な事はしない人物だろう。


 盗賊は逆に全くやる気がみられない。

店主の話も聞いているのかわからないし、こちらを見ようともしない。

大丈夫だろうかと不安にはなるが、半面害意は感じられない。


 最後に妖魔ドワーフだ。

全盛期を過ぎた気配はあるが、老練で厄介な人物だろう。

[持ち物から、呪いの気配がします]

瓢箪に入れてあるウンディーネが警告を伝えてくる。


「学術調査過程で手に入った物はエルフの総取りか?遺跡探索の護衛なら決めて置かねばフェアじゃない」


 突然、ドワーフが質問を投げかけてきた。

やはり気がつかれたか。

学術調査の場所には遺跡がある可能性も示唆されていた。

だが、経験がない限り思い至らないはずだったのだが。


「遺跡?遺跡ですか……。遺跡がある可能性は考慮していませんでした。そうですね……もしそうなら、調査対象外の貴重品は私とパーティで半々でどうでしょう?」


 私が少し考えるふりをして、答えるとドワーフは席を立った。


「儂らに依頼するか考えてくれ、儂らも依頼を受けるか考える」


「では夕食後に話をしましょう。ディッツ殿。面談は終了です。」


 私も店主に告げて部屋を出た。

どうやら依頼する冒険者は決まった様だ。

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