第4話 女シーフ 視点17
「貴女がカジノに与えた損害額は金貨2140枚。貴女は
あーしに向けてシーフギルドの幹部が言い放ったのはしばらく前。
カジノディーラーだったあーしは本当は親の総取りの18の目を出さなければいけない場面で17を出してしまいカジノに大損害を与えたのだ。
被害の責任と弁済を求められた当時のカジノの支配人は大商会の持つ銀鉱山に即日奴隷として売却され、ハルピアから出荷された。
鉱山で寿命まで働いても返済出来る金額ではないから、二度と会う事はないだろう。
最初はあーしも娼館に売り払われて弁済に励まされる予定だったが、その賭けで大金を得た竜人の姉貴分が、妹分はシーフギルド員だから、大きな目で見ればシーフギルドに損害はないと幹部を説得してくれ、カジノからの解雇だけで済ませてくれた。
だが、それ以来あーしは名前では呼ばれなくなった。
仲間内から17と呼ばれる様になったのだ。
もちろんディーラーは廃業。
それから、慣れないスリや窃盗で口を糊してきたが、元々それらを苦手としてディーラーになったのだから上手くいかない。
このままでは治安傭兵に捕まり犯罪奴隷にされるのは時間の問題だと考え、だったら、あの大金を得た竜人の様に冒険者になろうと決めた。
商隊護衛などで旅をしていれば、合間にちょっとダイスを転がす機会もあるだろう。
調べると冒険者の店は複数あり、その中でも未経験者なら[森の若木亭]が良いらしいと聞いた。
あーしは護身用短剣を持って店の扉をくぐった。
☆
「嬢ちゃんは冒険者志望かい?見た感じ[おのぼり]ではないみたいだけど。」
店に入ってエールを頼むと、冒険者の店の主人が声をかけてきた。
「あーしは冒険者志望だよ。17って呼ばれてる。」
そう答えて、シーフギルドで習うハンドサインをして見せる。
公然の秘密とはいえ、シーフですって名乗る奴はいない。
シーフは荷物持ちや偵察兵を名乗る事が多い。
「なるほど、偵察兵上がりか。良かったら仲間を紹介するよ。」
願ってもないチャンスだったので、紹介を頼みテーブルで待っているとガタイの良い竜人の女と気弱そうな大地母神の下級神官を紹介された。
「あーしは17って呼ばれてる。」
「か、下級神官のペプシです。」
「しなの、双月流刀術を修めている。」
互いに名乗るが紹介が女ばかりなのは良心的らしい。
男には女冒険者を仲間ではなく、無料娼婦ぐらいにしか考えない奴がいるそうだ。
「後、ベテランから指導員役を紹介する。バランスから、もう一人は戦士系が欲しいところだな。」
店の主人はそう告げてきた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回投稿は土曜日。
以後週一予定です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます