第5話 本当の居場所

わたしの家は父の乱雑な生活ぶりで殺伐としていた。家に帰れば「おかえり」と笑顔で迎えてくれる、出来たての食事が用意されている、夏であれば冷たいジュースを、冬であれば温かい紅茶を出してくれる、雨が降っていれば乾いたタオルを差し出してくれる、そんな温かい自宅とは無縁の家庭に身を置いていた。

足音を少しでも立てれば父に怒鳴られるので、そろりそろりとつま先を立てて歩く。

家に居ることが苦痛でたまらなかった。


めぐちゃんはわたしにとってバイト先であると共に、本当の家族みたいな居場所だった。実の家には居場所なんてなかったから。

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