第60話あれ…上手く行っちゃった
………寝れねぇ
さっきまでは『関門橋やうおおおおぉぉぉぉ』みたいにバスの中はうるさかったのに今では話し声が一切聞こえない、唯一聞こえる呼吸音も耳を凝らしてやっと聞こえるぐらいの音量だ
普通に考えて、車中泊とか初なんだから寝れるわけ無いよな
隣でスヤスヤ寝ている志歩の顔面をぶん殴りたい気持ちが湧き出ていた。
それと同時に寂しさも湧き出ている
澪さーん、今何してますかー
流石にもう寝ている時間だろうな、飯の時間も澪がいないし、隣にも居るのは澪のような美女でもなく男だし……
胸の中にはぽっかりと綺麗に穴が空いている感覚がする、それが澪の不在って気づくのは容易のことだった。
作曲の方も進めないと行けないのに余り進んでないし
澪の誕生日までは3ヶ月ある、もしこの間に3曲投稿できたら最高の展開になるだろう、でも、現状1曲目の歌詞すら出てきていない、後は歌詞だけなんだけど……いや、合宿中は考えないようにしよう
そんな事を考えた束の間、おれは無意識にスマホのチャットアプリを開き、澪のアイコンをタップした。
すると、そこには2つのメッセージがあった
『合宿頑張って来てください、怪我には注意ですよ』
おれの精神安定剤であり、おれが大好きな人からのメールはおれのポツリと空いた穴を埋めるには十分すぎる代物だった。
そして、さらにおれの瞳に写った文字のせいで心臓はうるさくなってしまった。
『早く帰ってきてください、会いたいです』
おれは天を仰いだ
そして、少し怖いとも感じれる静けさに、1つの甘ったるいフレーズが広がった
「おれの嫁可愛すぎんだろ」
◆◆◆
「むぅ……」
深夜2時
いつもだったら、鍛えられた蒼君の胸により掛かるように寝ているのに今日はそれができない
せっかく、蒼君の服や布団から蒼ニウムを接種したのに、全然足りない
私は余り寝付けず、蒼君の枕にほっぺたをこすりつけ、顔もいつものように蒼君の胸にこすりつけるのと同じみたいにしたりして、私が勝手に命名した新元素蒼君の成分――蒼ニウムを接種したのに蒼君から直接接種した蒼ニウムには到底かないません
「夏休みですよ、なんでこんなにイチャイチャできる特別な時期に合宿を入れたんですか、私の蒼君を取っていかないでください」
普段聞こえる蒼君の規則正しい可愛い寝息が聞こえないシーンとした蒼君の部屋に、私は頬をぷくーっと膨らませながら言いました。
私は見たことのない男子バスケットボール部のコーチに文句を言いつけていました
「蒼君…蒼君…蒼君、私を抱きしめてよぉ、ぐす」
その日の夜は果てしないように感じました。
しかし、そんな憂鬱な気分を晴らす事件が起きました
「え、ちょ、え……え?」
再生数……これっていわゆるバグという奴なのでしょうか?
私が昨夜、ヨウチュウブという、全世界でシェアされている動画サイトにアップロードした歌ってみた動画は50万再生を超えていました。
デビューして間もない赤子のような私の歌をこんなに聞いてくれた喜びと、後ろ盾もない私が本当に50万も聴かれたのかという疑いもありました
しかし、コメント欄には私の歌声を褒めてくれるコメントで埋め尽くされていました。
『美しい……』
『チャンネル登録しました。これからもがんばってください』
『透明感ある歌声に癒やされました』
コメント数と再生位数が更新ボタンを押すたびに増加していき、これが本当なのか疑いたくなりましたが、1つ私の目に留まったコメントが有りました
『えるちゃんの投稿から来ました』
えるちゃん?
私はすぐに調べてみると、そこにはチャンネル登録者数150万を超える大人気VTuberさんがいた。
そして、その人がSNSに私の投稿を引用して投稿していた。
そこには私のことを棚に上げるにはもったいないほどの言葉が沢山打ち込まれていた
『皆、この人の歌聴いてね、めっちゃ癒やされるから、私が最初のファンだからね!』
……一旦咲茉ちゃんに連絡しよう
『咲茉ちゃん、なんか凄いことになってます』
私はチャットアプリで咲茉ちゃんにメッセージを送ると、物の数秒で返信が帰ってきました。
『それな!澪ちゃんの歌声がやっと世間に認められちゃったかー』
「どういう意味なんですか」
私は咲茉ちゃんの返信が面白く、蒼君の布団に仰向けで倒れました。
よし、この波に乗ろう
まずは自己紹介とかしとこうかな
私はSNSのアカウントで自分の自己紹介をしました
『おはようございます、機能から活動している
今後とも柳澪を応援してくれるとうれしいです、そして、今日生配信をします、初の生配信はゲームをしていきます、ぜひ見に来てください、あ、下手なのでそこはお願いします』
後は投稿を押すだけですが……咲茉ちゃんに相談しましょう
『咲茉ちゃん、この波に乗るためにゲーム配信をするのはどうでしょうか』
『いいじゃん、それだったら新規も獲得できると思うよ』
『わかりました』
よし、押そう
そして、私の投稿は世に放たれてしまった。
ゲームは蒼君のを借りましょうか
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