第50話黒の女神は蒼と一緒に夏祭りを堪能したい
「蒼はこの後どうする?」
義隆が汗を拭き取りながら話しかけてきた
「少しだけシューティングして、帰るかな」
おれは水筒で水を摂取して言った
今から中央駅に向かっても電車が無い、どうせ待つならシューティングしたほうがいいだろ
それにサマーナイトには間に合うからな
すると、そばにいた志歩が言ってきた
「お前らは今日のサマーナイトどうする?」
落ち着いて
急に志歩がサマーナイトという単語を言ってきて少し驚いたがおれは何も無いかのように表情を変えずに答えた
「愚問だねぇ志歩君よ」
「そうだぞ志歩」
「「もちろんゲーム」」
ごめん義隆、おれは行くんだ
義隆はさも当然かのように言っていたのでほんの少しだけ胸が痛くなった
「おれは行くよ」
「「は?」」
ドリブルを付きながら、すっごいニコニコしながら久則は義隆と志歩に向けて言った
そして2人は誰でも見てわかるぐらいに動揺していた
志歩に至っては水筒を落としてしまった
「嘘だろ……」
「ふふふ、ふははは、哀れな人間どもが、っておい、やめろ」
義隆が華麗にさっきまで久則がドリブルを付いていたボールを奪い、志歩が久則の体をガッチリと固定して、逃げれなくし義隆は狙いを定め今すぐにでも投げることができる体制になっていた
「君の運命のサイコロはおれ達が握っている」
「調子乗るなよ」
「一旦落ち着こう、ドウドウ」
「「あ゛」」
「はい」
桜島高校男子バスケットボール部には、とある処刑方法が代々伝わっている
その名も――ボール撃ち
その名も通り、相手の足、腕、みぞおちにボールを当てる、みぞおちは流石に当てはしないが、足は結構皆当てている
痛いか痛くないかだったらもちろん痛い
特に冬場はね、でも、めっちゃ痛いってわけじゃないし、流石に加減もするはず、いやしないといけない
義隆は『死ね』といつもより低い声を発しながら、久則の太ももあたりにボールを当てた
「っっぃてーなおい!」
「自慢するのが悪い」
「いやいや……すいません」
義隆がもう一回ボールを構えるとすぐに久則は考えを改めた。
やっぱり、人間の思考回路を帰るには暴力がって取り早いのかもしれない
しかし、殺伐とした空気を切り裂いたのは
ピロン
おれのスマホの通知だった
おれは急いで確認すると
『いつ帰ってきますか?』
『できたら早く帰ってきてほしいです』
『買い食いはしてこないでくださいね、沢山食べれなくなりますよ』
『午後5時に蒼君の家に向かいます』
クソ、こんなの断れるわけないじゃないか、今日はもうシューティングせず帰ろう、ワンチャン1本先に乗れるかも
「おい、誰だ」
「ん、あー、ネッ友からだよ」
そう言うと、2人は般若の面を脱ぎ捨てたかのように笑顔になり
「もしかして早く帰ってこい的な?」
「うん」
「じゃ、バイバイ」
「あ、バイバイ」
案外すんなり行けたな
おれはバッシュを脱ぎ、急いで中央駅に向かった
◆◆◆
夏の夜、日中より気温が下がり、過ごしやすくなっる時間帯
もしかしたら、人によっては少し肌寒いと感じるかもしれない、そんな今日
「蒼君、次は何を見に行きますか?」
おれは、嫁の浴衣姿のせいで体が熱くなってしまった。
タンクトップ壱枚だけでも暑いと感じるかもしれない
澪が振り返って見てくる。 ふわりと揺れる淡い藤色の浴衣、散りばめられた花模様が夜の光に映えている。まとめられていて、後ろには小さな花飾りがつけられている。 それがまた彼女の透明感を際立たせて、胸が高鳴るのを抑えられない。
「…いや、その…なんでもいいよ。」
妙に緊張してしまって、ろくな視線ができない。
澪の浴衣姿は、買い物のときに見たことはあったが……
髪型を変えるだけで更に美しくなるのか
「蒼君、さっきからずっと変ですよ?」
澪が小さい首をかしげて俺を見つめる。 その仕草が可愛すぎて、視点をどこに向けたらいいのかわからなくなる。
「いや、その…浴衣、すごく似てるなって思って。」
正直言ってみたら、澪の顔が一瞬で赤く染まった。
「そ、そうですか…ありがとうございます。」
澪は音量を落としながら、小さな声で答えた。
「いや、ほんとにさ、なんか…前の買い物の時より綺麗でさ。」
自分でも本気になるくらいドストレートな言葉を口にしてしまった。
いや、まぁ、事実だし
「も、もう…!蒼君、浴衣は同じなんですよ?」
澪がぷいっと背を向けるのに、耳まで赤くなっているのがわかっている。
照れ隠しが可愛いと思うのと同時に、おれの悪魔はもっといじめろと言っている
「ごめん、でも本当のことだし。」
笑いながら言い、澪はさらに困った顔をして、うつむいてしまった。その動作すら可愛い。
「ねぇ、澪、花火の後、少しだけ移動するけど良いかな」
さぁ、本題だ
澪からしたら花火のほうが優先順位は高いのかもしれないが、おれからしたらペルセウス座流星群の方がおもろいし、綺麗だと思う
夜風が吹いて、浴衣の裾が少し揺れる。
それと同時に、三日月が着いた簪は音を立てた
心地よい音を立てた
「はい、良いですよ」
澪はそう言うと、おれの腕に顔を隠すように抱きついてきた
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