第51話黒の女神を追い詰めたい
私は蒼君に髪型を褒められて嬉しかった
確かに浴衣は同じだけど、あの時の買い物とは違い、今日はしっかりと簪も使って夏祭りっぽい髪型にお母さんにしてもらいました
◆◆◆
「どうしようぅ……ぐす」
時刻は午後3時前
私は鏡とスマホを交互に見ながら、納得のいく髪型にセッティングをしていました
しかし、ただでさえ夏祭りにはあまり行った事はない、その上初めて簪を使っての髪型
不慣れによる焦りにより、私の額には一粒に汗の雫が湧き出ていました
どうしようどうしようどうしよう
時計の秒針により私は冷静さを欠けていました
「澪?」
「何、お母さん」
どうして写真のように出来ないの?
部屋には私の少しペースが早い呼吸と無造作に三日月の中にある水色の宝石が振れる音が鳴り止む気配なくずっと鳴っていました
できたと思っては確認して変な所を発見し解く
そんな行為を繰り返していると、後ろから『まったく』とお母さんから呆れた?ような声が聞こえました
「澪、お母さんがしてあげるから」
「良いの!」
「そんなに泣かなくても良いのに」
「だって…できなかったんだもん」
お母さんは私の背中に立つとすぐさま『この髪型で良いのね?』と聞かれたので首を縦に振りました。
「よくこれを自分でしようと思ったわね」
「だ、だってぇ」
お母さんは私の髪を結びながら言いました
だって、これが1番可愛かったんだもん
私が選んだのは、普段髪を結ぶ事がない男の子でもこれを自分1人でするのは無理と発言するレベルの髪型に挑戦していました
それでも蒼君に可愛いって褒められたいので挑みましたが結果は無様でした。
いつもはストレートですからね、今後は練習も兼ねて結んでみようかな
今回の苦戦した要因は普段の学校生活から髪を結び慣れてないからと考察した私は9月からは髪を結んで登校するのを決心しました
「はい、これで終了」
「ありがとうお母さん!」
「ふふ……頑張るのよ澪」
「うん」
絶対に他の女の子から蒼君に手を出させない
他の女の子に見せつけるチャンスです
◆◆◆
「なぁ、澪」
「なんでしょう?」
「っ」
「ん?」
澪は腕に隠していた顔をひょっこりとおれを見上げるように顔を覗かせた
うん、可愛いすぎる
考えてほしい、自分の好きな人がさっきまで腕に顔を埋めていた。
もうその時点で世の男性諸君は死にかけだろう
おれも心臓が聞こえるのでは?と疑いたくなるぐらいうるさくなった
そして、顔を澪の位置まで下げたらもうキスができそうなぐらいに至近距離な状態
ただでさえ、澪は黒の女神って言われるほど顔が整いすぎてるんだから、もう少しおれの気持ちを考えてほしい
おれは話題を変えるために
「あっちに着いたら、最初に本屋寄って良い?」
「良いですよ」
よし、話題替えに成功
まぁ、実際普通に買いたい小説があるからな筋は通ってる
「でも、先に行っといた方が良いのでは?」
おれは考え、一つ完璧なカウンターとなる返しを見つけた
おれだけ照れるのはおかしいよなぁ
「電車が着いた瞬間に向かうと、同じ目的地に向かう人で溢れて歩きにくいし」
おれは澪を胸に抱き寄せ、髪型を崩さないように頭を優しく撫で
「こんなに綺麗な澪を他の男に見られたくないからね」
ついでにトドメの一撃をぶち込んどくか
おれは耳元で囁くように言った
「おれだけの可愛いお姫様」
「っっ……!」
決まった。
おれはなぞの優越感に浸かっていると、
「ば、ばかぁぁ……」
澪はほぼ消えかけている声で言ってきた
あああぁ、なんでこんなに私の嫁は可愛いのだろう
澪は小さな腕で胸を叩いていたが、痛みは全く感じなかった。
「もうすぐで来るから落ち着いてね」
「は、はぃ」
いざ電車に乗り込むと、車内は予想以上に混んでいた。
それもそうだろう、サマーナイトはめちゃクソ大きい祭りだからな、ほぼ満員になることなんて予想できるのは容易い
「蒼君…これ、ちょっと…」
澪の声が少し戸惑い気味に聞こえる。
うん、流石に多すぎでは?
いやね、わかってはいた、でもさ、ここまで多いとは予想できないじゃん
「澪、ついてこい」
「は、はい」
多分、東京とかでしたら迷惑な人としてSNSで取り上げられていたかもしれない
おれは自分のフィジカルで道をこじ開け、なんとか壁際に映ることができた。
「澪、中央駅まで我慢してね」
「……ん」
澪は首を縦に振った
おれは澪を男子たちの視線から守るように、壁ドンして体に澪を収めた
いや、恥ずいっすね
正直言って今年の恥ずかしいランキングに確定でTOP5に入るとも思うぐらいに恥ずかしい
だけど、澪を他の男に見られるのは嫌だ
澪は小さな声で「うぅ」とか言って悶えていたが、中央駅までの辛抱だからと言って我慢してもらった
おれの理性も保つように願いたい
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