第48話心臓は既に悲鳴を上げている

家で家族と澪の準備を待っていると


ピンポーン


家のチャイムが鳴った


「あ、蒼君、お待たせしてしまいましたか?」


玄関を開けると、早々にその声と同時に目に飛び込んできた澪の姿に、一瞬息を呑んだ。


白地に紫の花びらが散りばめられたロングスカートに、淡いラベンダー色のブラウス。上品で清楚なその服が、まるで澪のために作られたみたいに似合っている。それに、おれが買ったアクアマリンのイヤリングと、髪型がプラスされお嬢様に見えた。

今日の澪はいつにも増して綺麗で、目が離せなかった。


「…いや、待ってないけど…澪…」


言いながら自分でも驚くくらい声が上ずってしまった。


やば、絶対にキモがられた。

仕方ないでしょ、普通にドレスを着せれば女王様って間違われそうな美貌、これで、声のトーンを変えずに言える男は女たらしだと思う


澪はおれが途切れ途切れに言ったせいで不安そうに首をかしげて俺を見る。


「え?」


あ、死ぬ


その仕草に心臓がずっと鳴り止まず、可愛いって思ってしまう自分が恥ずかしいけど、正直な感想を言わずにはいられなかった。


「めっちゃ似合ってるじゃん。それ、選んだの澪?」

「えっ、あ、ありがとうございます…。そ、その…自分で選びました。」


いつもの澪らしく、控えめに答える彼女。顔がほんのり赤くなっているのを見て、また心臓が変に高鳴った。


照れてる澪さん破壊力エグ、体に悪い


おれは澪の照れ顔のせいで、顔が赤くなりすぐさま視線を外し首をかきながら言った


「白と紫って、すごい上品で綺麗だし、イヤリングと髪型も合わさって、お嬢様みたいで可愛い」


言葉が出てくるまま口にしてしまう。けど、本当にそう思ったんだから仕方ない。


「え、か、可愛いとか…!」


澪がさらに顔を赤くして俯く。その仕草が可愛すぎて、うっすらと視界の隅に写っていても視線を奪われてしまった


「本当のことだからさ。こういうのもっと着たらいいと思う。絶対似合うから。」

「も、もう、蒼君…!そんなに言われたら恥ずかしいです…。」


澪がバッグをぎゅっと握りしめながら小さな声で抗議してくる。けど、全然怖くないどころか、その反応もいちいち愛おしい。


「でも、澪がせっかく選んだ服なんだから、ちゃんと褒めないとな。」


そう言うと、澪はさらに顔を隠して小さくなった。こういう時の澪は本当に素直で、見てるこっちが恥ずかしくなってくるくらいだ。


「…ありがとうございます。でも、本当に…恥ずかしいですから、もう。」


か細い声でそう言いながら、澪がそっと顔を上げる。その顔が赤いままなのを見て、俺はつい笑ってしまった。


「恥ずかしいって言うけど、似合ってるんだから仕方ないだろ。」


そう返しながら、なんだか胸が暖かくなる。こうして澪と会える日がどれだけ特別か、改めて思い知った。


◆◆◆



「澪ちゃん、本当に可愛いわ」

「はしゃいでるな彩姫」

「うん、めっちゃお母さん元気」


車で30分移動し鹿児島市にある大きなショッピングセンター着くと、お母さんはすぐさま澪の手を取り、服屋に向かった。

そして今、澪はお母さんの着せ替え人形と化していた


お母さんは澪を自分の娘みたいに扱い、着せ替えていた

でも、澪にも輝かしいほどの笑顔が見えるので、澪からしても楽しいんだろう、澪が楽しければなんでも良いけど


すると、遠くから「蒼君来てください」と呼ばれ「ほら、行ってやれ」と親父に促されて立ち上がり、声のする方に向かう。すると、俺の視界に現れた澪の姿に足が止まった。


――そこにいたのは、浴衣姿の澪だった。


淡い藤色を基調にした浴衣に、薄い白い花模様が散りばめられている。帯の結び目は鮮やかな紫で、全体が澪の雰囲気にぴったりだった。髪はふんわりと綺麗な三日月が付いている簪でまとめられ、後ろには小さな飾りが揺れている。普段の澪ももちろん可愛いけど、今はその何倍も綺麗で…目を奪われてしまった。


「…どう、ですか?」

澪が控えめに顔を伏せ、こちらをちらりと見上げてくる。その仕草がいちいち反則なくらい可愛い。


「あ…その…めちゃくちゃ似合ってる」

なんとか言葉を絞り出したけど、正直それだけじゃ足りないくらいだ。


「そ、そうですか…ありがとうございます」


澪の頬がほんのり赤く染まる。指先を少し握りしめながら立っている姿が、浴衣の清楚さと相まって、余計に胸がドキドキする。


「澪、ほんと綺麗だよ」


自分でも恥ずかしくなるくらいストレートな言葉が口をついて出た。澪の顔がさらに赤く染まり、視線をそらしてしまう。


「彩姫さんが、夏祭りも近いからって…」


困ったように言う澪の後ろから、満足げな母さんが顔を出す。


「どう?蒼、この子の浴衣姿。頑張ったんだから、ちゃんと褒めてあげなさい」


お母さんは胸を張って言った


あんたじゃ無いだろと思いながらも


「…めちゃくちゃ似合ってるってば」


再度言うと、澪がさらに赤くなってうつむいてしまった。その様子が可愛すぎて、俺は苦笑いを浮かべる。


「いや、ほんと、これ以上可愛くなられると困るんだけど」


冗談混じりに言うと、澪は「も、もう…!」と小さく抗議してくる。


……夏祭りか


流石に澪も行きたいだろうからそっちに行きたい、てか単純に浴衣姿を眼球に焼き付けたい

でも、練習が被ってる説もある


折角の夏休みなんだから練習をたくさんしたい

でも、『部活だ』って言ったら澪は当分立ち上がれなさそうなダメージを受けそうだ、そんな姿は見たく無いしケアもめんどい


おれは楽しく会話しているお母さんと澪を見ながら解決策を考えていた

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