第47話家内最強は……

「……っ、あ、朝か」


昨日は澪がいない事に少し悲しくなり、布団に直行したから、窓にはカーテンがかかっていなかった

それのせいで、おれの顔面には日光が直撃していた


「過去最悪の目覚めやんけ」


澪がいなかったから寝つくには時間がかかるし、太陽に目覚めさせられるし、せっかく休みをもらったのにスタートがカスだと気分最悪になる


おれは気分が萎えている状態で1階におり、お母さんが作ってくれた朝ごはんを食べた


「おはよう蒼」

「おはようお母さん」

「今日部活は?」


お母さんはケトルでお湯を沸かせ、インスタントコーヒーを淹れ『飲む?』と聞かれたので、おれは素直に首を縦に振り意思表明した


「今日は休んだ」

「何故?」

「せっかくの記念日だから家族旅行にでも行きたいなーと思い」

「ほな行こか」


わーお、軽いね


おれはお母さんに淹れてもらったコーヒーに手をつけた


「あなた、どこに行きます?」


エアコンとクーラーの風の音、蝉がミーンミーンって鳴いている音が家に響く中、36歳の男が男泣きをかましている


お父さんは『そうだなー』と言いながら電話で録画しとけと言われた宝塚記念の特集を見ながら適当な感じで返した


こいつ競馬好きすぎてだろ


お父さんが男泣きを流しているには理由があり、今回の宝塚記念には一昨年の三冠馬がゲガ明けの約1年8ヶ月ぶりの復帰レースになる、結果としては5馬身の差し切り勝ち、まるで1994年を彷彿させるような圧倒的な勝ち方、余裕のある勝ち方で復活を遂げから


普通にドーピングを疑いたくなるような勝ち方と実況の『後ろは接戦前は歴然』 という実況がかっこよくて、宝塚記念はSNSでトレンド入りするほど人気になった


普通に実況がカッケー、良くあんなフレーズ出てくるよな


そんな事思っていると、さっきまではキッチンにいたお母さんが足音も気配も立てずに、お父さんの後ろにいた


特段強い殺気にお父さんは即座に振り向き、宝塚記念の特集を停止した


「どうしましたか?」


お母さんは赤子が泣く笑顔でお父さんに話しかけた


あ、死んだな


人生16年しか生きていない、なおかつお母さんとお父さんがこの家にいたのは総合で6年ぐらいだろう、そんな短い時間でも本能に刻み込まれた笑顔


おれには殺気も笑顔も向けられてないが自然に姿勢が良くなってしまった


「ショッピングなんてどうだ?」


流石お父さん、殺気に慣れてる——と思っていた柊蒼君は眼科を受診した方が良さそうだ


お父さんは視線を上下左右に動かしながら、お母さんとは決して目を追わせず、その上おでこには冷や汗が付いていた


「良いですね、では後1時間でここを出ましょう」

「わかった」

「せっかくなら、澪ちゃんも誘ったらどう、蒼?」


お父さんに向けられた言葉と違い、おれの事をよく褒めてくれた優しい声色にすぐさま変化した言葉に少し度肝を抜かれたが、おれはすぐに返事をした


「じゃあ、誘うよ」


おれはこの場から逃げるように、普段の歩くスピードの3倍ぐらいで2階に駆け上がり、身支度をし始めた


◆◆◆


ピロン


「ん?」


布団に倒れながら、窓に映る綺麗な青色にところどころあるホイップクリームみたいに柔らかそうな雲をぼーっと眺めていると、スマホから通知が来ました


『家族と買い物行くけど来る?』


私はそのメッセージを見た瞬間布団から跳ね起き直ぐにクローゼットを開け、来て行く服装を考え始めた


ここは前着たワンピースか、それともロングスカートと可愛いトップスを着るか


私は考えましたが、直ぐにワンピースは選択肢から除外されました

理由は簡単、夏休み前の遊びの時は蒼君にひっついて、腕の虐められた傷を隠せたけど、今回は蒼空さんと彩姫さんもいます、蒼君はたまたま騙せたけど、あの夫婦は騙せなさそう、これ以上周りに迷惑をかけたく無い


私はクローゼットにワンピースをハンガーに掛けて直し、今日の勝負服を決め髪のセットを始めました


◆◆◆


蒼君に買い物を誘われ、選んだ勝負服は純白な白地に紫の花びら模様が添えられたロングスカートに、淡いラベンダーカラーのブラウス。それに蒼君に買ってもらったアクアマリンのイヤリングと、ラベンダー色のショルダーバッグを合わせた。


髪型は咲茉ちゃんと遊んだ時と同じハーフアップにしました。


「これで大丈夫…ですよね?」


鏡の前で何度も確認すると、ニヤニヤした自分のお顔が見えました


仕方ないじゃないですか、全国の乙女は好きな人に褒められる妄想をするはずです


少し気分を落ち着かせるために深呼吸してから家を出た。少しでも蒼君に褒めてもらえたらいいなと思いつつ、なんだか胸がそわそわする。


私は多分尻尾が着いていたらブンブン左右に振れていると思う


やっぱり、蒼君との遊びは何回行っても気持ちが慣れませんね、まぁまだ数回しか高校に入って遊んでいませんが、それでも多分私はずっとドキドキすると思う


私はドキドキする鼓動を収めながら、蒼君の家に向かいました


後書き


おはようございます、アカシアです

この話は12月15日の分です

投稿が遅れた理由は、12月15日に練習試合があり、時間がなかったからです

午前中は物理の再試のためにずっと勉強しており、気づいたら、練習試合に向かう時間で書く時間はありませんでした。

今日は午後7時半、いつもの時間にも12月16日分を出します





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