第45話終わってる

「向こうで女子会をしてるらしいので、こっちで男子会をしようと思う」


お父さんと和希さんはお互いの盃を綺麗な音を響かせながら乾杯し、柿ピーとチー鱈をつまみとして食べていた


「まぁ、向こうは多分めっちゃ盛り上がってるんだろうな」

「だろうな」


俺はそのやり取りを少し笑いながら見ていた。二人とも気さくで話しやすい雰囲気だったが


普通こういうのでアルコール摂取するか?しかも柿ピーとチー鱈って、ただのジジィの集会だろ

絶対にコーヒーとか紅茶を飲みながらの方が雰囲気良いって


そんな事思っていたら、爆弾が投下された


「蒼君や、澪のことで何か相談があれば言ってみよ」

「お前がよく言えるな」


突然振られて、おれは少し動揺した。


向こうからしたら適当に話題を出しただけなのかもしれないが、澪って名前が聞こえたら自然と胸が高鳴のは自然の摂理、全国の男子高校生は好きな人の名前が聞こえたらこんな反応するでしょ


「えっ、いや…特に問題とかはないですけど」

「そうか?」


和希さんが意地悪そうに笑う。


「まあ、もし澪に関しての悩みがあるんだったらおれか蒼空がお悩み相談教室を開いてやるから、なんてったって未来の婿候補だもんな?」

「おいおい、違いまっせ旦那、候補では無く、未来の夫婦ですぞ」


絶対もう回ってるだろ


お父さんが和希さんのノリに乗り、2人でガハハと笑っていた。お互いに爆笑している中おれの顔は熱くなり何も言えなくなってしまった


そんなおれを見て、和希さんは少し真剣な顔に変わった。


「でも蒼、澪は一見しっかりしてるけど、意外と傷つきやすい子だからな。お前がうまく支えてやらないと、ふっと崩れることがあるかもしれない、そこはしっかりと夫として支えろよ」


その言葉には重みがあった。おれはただ真剣に頷くしかなかった。


まぁ、確かに側から見たらしっかりしてるけど、実際はおっちょこちょいなミスをしてるしな

それに澪は繊細な心だからそこは今後も注意しとこう


「もちろん、おれが言わなくても、お前ならちゃんとやれると思うけどな。」

「おれの息子だぞ、期待しとけ」


あんたが言うなと思ったがそれは和希さんも同じだったらしく『お前が言うな』そう言いながらチー鱈を一つ取り、口に放り込んだ


「和希は昔から真面目でな。誰もが羨む優等生だったよな」

「蒼空はその逆で、問題児だったな。」

「おいおい、そんなこと言うなって。」


二人の掛け合いに笑いが止まらなくなる。


うん?問題児?


2人の笑い声と、扇風機とエアコンの音が少しうるさいと感じるリビングの中、和希さんが言った言葉耳元で発せられたのでは?と疑いたくなるほど綺麗に一言一句聞き間違える事無く聞こえた。


誰しも親が問題児でしたーってカミングアウトされたら普通に少し父親の事を引くだろう


現におれも少し引いたから


「聞きたがってるぞ蒼空、高校時代の話を蒼にしてやったらどうだ?お前の伝説の話を」

「おいおい、恥ずいからいいだろ」


お父さんが苦笑しながら手を振るが、和希さんは続けた。


「いやいや、蒼にも聞かせるべきだと思うぞ。お前のおバカ行動の話」


おれは少し興味をそそられて、「聞きたい」と促した。お父さんは頭をかきながら観念した様子で話し始めた。


男でこう言う話に興味を示さないのは少ないと思う


「まあ、俺が高校生のときの話だ。実は、文化祭でちょっと調子に乗りすぎてな。」


お父さんは目を細めながら思い出を語り始めた。


「おれのクラスでは、お化け屋敷をやることになったんだが、どうせなら最後の油断した所も狩ろうぜってなって、後は教室から出るだけって所で足を掴もうってなったんだ」


お父さんは苦笑しながら言った


率直な感想はキモイだった


だって足を掴まれるって嫌でしょ、それに力がある人が女の生足を掴んだら普通に警察行きだろ


「まぁ、お前の考えもわかる、当時は深く考えなかった。生足を掴んでも別に悪くない、むしろ最高の演出だと思ってたさ。」

「それでどうなったの?」

「結果としては全員奇声を上げてくれたよ」


蒼空さんの顔には、少し苦い笑みが浮かんでいた。


「その後、彩姫に、実はあの最後に足掴んだのおれなんだって言ったら、普通にキモイってゲタモノを見る目で言ってきたんだよ」


和希さんがそれに続けて


「蒼空は根はいい奴だったけど、ちょっと自由すぎたんだよな」


と笑いながら言った。


「そして、アンケートで1番盛り上がったのはって質問にて男子部門で堂々の1位は我がクラス、そして女子部門では堂々の最下位を記録したんだ」


お父さんはヒトラーのように堂々と演説したが、うん、だろうなって思った


普通に考えて女子でも一位だったら変態しかいないじゃん、お父さんの学校終わってるんだなって思うよ


おれはチー鱈をつまみながら呆れた目でお父さんを見つめた


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