第30話黒の女神にはまだ早かった

「澪ちゃんって高音綺麗すぎるね、羨ましいよ」


私はカラオケにて、女子でも出せる人が少ないと思うほど高い声を必要とする曲で見事90点台を叩き出した。


「私なんて……咲茉ちゃんの方が点数は全て高いじゃないですか」

「でもさー、やっぱり歌が上手いイコールカラオケで高得点をバンバン出せる人ってわけじゃないじゃん、澪ちゃんはカラオケで点数が高い人は歌唱力ある人って考えてると思うんだけど、それは違うと思う……澪ちゃんが歌ってみたを出す価値は十分あると思うよ」


最初はただの私を褒めいるだけだと思っていましたが、咲茉ちゃんの目を見ると、冗談では無い、そう感じました。


「でも、機材関係を考えるとまだまだ時間は必要だと思います」

「機材は私が貸してあげるよ」

「え?」


咲茉ちゃんってもしかして……いや、そんなわけないですよね


「従兄弟がそっち系の仕事についてるから、私が頼んだら貸してくれると思うんだ」

「へぇー」


咲茉ちゃんの従兄弟さんは配信者か何かなのかな?


咲茉ちゃんは少し慌ただしく言った。


でも、これで機材問題は解決したんだ、あとは私の気持ち次第


「もし、これで大ブレイクしたら蒼君は喜んでくれるんでしょうかね」

「そんなの当たり前だと思うよ、蒼君だったら自分のことのように喜んでくれるよ」


その言葉により私の背中は押されました。


蒼君は褒めてくれる、いつもは特定の友達としか喋らない、特定の人とでしか喋れない私がインターネットの世界で有名になったらどんな顔をするのでしょう


私は覚悟を決め


「いつ借りに行けばいいですか」

「いつかー……まぁ、澪ちゃんが一番自信ある曲を更に極めて、自分でも納得できるぐらいに仕上げたら借りに来てよ」

「わかりました」


蒼君の誕生日まではまだあるけど、油断してはいけない、咲茉ちゃんにあんなに褒められたんだ、自信を持とう


◆◆◆


「ただいまぁ」


……あれ、なんで返ってこないんだろう、いつもだったら『おかえり』って返ってくるのに、私の心を癒やしてくれる声が返ってくるはずなのに、おかしい


どこ

どこ

どこ

どこ

どこ

どこ

どこ

どこ

どこ


私は冷静になれなかった、普段だったら理解できるはずなのに今日は何故かずっと考え込んでしまった。


「蒼君、蒼君、あおくぅん」


信じたくない考えが私の頭を埋め尽くす――どこかの女と浮気

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ

嫌だ


蒼君は私の物、私だけの物


その時、風呂場から音がしました。


無意識に私の足は風呂場に向けられました。



◆◆◆


ボディーソープ切れてるんかい


おれは頭を洗い後は体だけ――なのに、一向にボディーソープが出てこない


おれは澪のボディソープを見た。


量はまだある、体を一回洗うぐらいだったら絶対にバレない……訳を聞いたら澪も納得してくれるだろう、これは仕方ない事、誰も悪くない


おれは仕方なく澪のボディソープに手を伸ばした。

別におれは悪い事をしているわけでもないのに、何故か罪悪感で押しつぶされそうだ


「めっちゃいい匂いだな」


なんかキモい行動をしてるけど……おれだって抑えたかったよ、でもねおれだって男子高校生、思春期まっしぐらな16歳なの、好きな人のボディーソープの匂いは嗅ぎたいもんじゃん、皆もそうでしょ


これを毎日使ったら……いややめよう、男からフローラルな匂いが漂ってたらなんかキモいな、そもそも匂いを変えるメリットをあまり感じられない、今日だけ使わせていただいて、今後は使わないようにしよう


てか、そろそろ澪が帰ってきそうだな、早く洗い終わるか


いつもよりできる限り、体を早く洗い泡をすぐに洗い落とした。


バーーン


なんで柊家の風呂場のドアはこんなにも大音量なんだろう、シャワーの音を遮るほどの防音性能があっても、これじゃ意味ないんじゃないかな


おれはタオルをとり、体を洗おうとすると、外からまるで徒競走でも行われてるのかな?って疑いたくなるほどうるさい音で誰かが走って来た


「蒼ぎゅーん」

「えちょ、ば」


一旦整理しよう、おれは今全裸、タオルで隠したりしていないまぎれもない全裸、そして今おれの胸には、サラサラな黒髪を持っていて美貌の神様アフロディーテが人間に転生した姿って言っても疑われない人間――澪がいた


想像してほしい、自分の好きな人がもしくは推し、嫁、その人が泣きながら急に抱きついてくる……自分の名前を呼びながら大号泣、守りたくなるような体と美声での大号泣……興奮しないほうがおかしい


「ごめん澪、離れて」

「嫌でしゅ、絶対に離しましぇん」


ただでさえ、あそこが元気になってるんだ、恥ずかしいんだ、おねがいだから離れてくれ


「……って、蒼君!」


終わった。

お父さん、和樹さん、おれは男としての人生を終えたいと思います


「っっっーーー!!!」

「……一旦着替えさせてね」

「は、はぃ」


着替えてる最中、耳に入ってくる声は、ずっと澪がおれのでかくなった物を見て赤面しながらずっとぼそぼそと呟いている声だけだった。


「あれ……あんなの……お母さん……」


もし、おれと澪が結婚したら、澪は行為の恐怖心は無くなってるのだろうか

そもそも、澪とおれはいつもみたいに喋れるのだろうか



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