第8話 さらに四年経ち……

 はい、気が付いたら、転生してから七年目の春です……。

 今年から学校に通うことになりました……。


 今、俺はクラスメイトと共に、学校の教室で担任のターラ先生から説明を受けている。

 ターラ先生は、綺麗な水色のショートヘアで黄色の瞳の美人。


「――えーと、後は……」


 ターラ先生がおそらく説明内容が書いてあるであろう紙を見つめる。

 多分、新人の先生なのかな。


 とりあえず、ターラ先生から受けた説明をまとめると、授業は平日の午前中のみで、一日三時間授業であり、授業と授業の間に十分間の休憩があるとのこと。

 科目は、国語と算数、社会、魔法、剣術の五科目で、全部ターラ先生が教えてくれるとのこと。

 授業で使う道具は、すべて学校から貸し出したり、支給してくれるとのこと。


 紙を見つめていたターラ先生が説明を再開する。


「あー、あと、学年が上がる前に二週間ほどの休みがあります。 それと、授業をたくさん休んだとしても必ず五年で卒業することは出来るので安心してください」


 え、授業サボっても良いんだ……。 サボろうかな。 お母さんたちに怒られそう。 うん、やめとこう。


「えーと、これくらいかな。 じゃあ、何か質問がある人はいますか?」

「は~い」


 クラスメイトの一人が手を挙げる。


「はい、グレトくんどうぞ」

「ターラ先生はいくつですか~?」


 将来チャラ男になりそうな金髪のグレトくんが、ニヤニヤしながら質問する。

 こいつ、女性に年齢に関する質問はタブーなの知らないのか?


「はー、今年で二十になります。 他に質問ある人はいますかー?」


 へー、ターラ先生は二十歳なんだ、若いなー。


「はいは~い!」


 また、グレトくんが手を挙げる。


「……はい、グレトくんどうぞ」

「ターラ先生の『ジョブ』はなんですか~?」


 「ジョブ」とは、十五歳になる年に手に入れることのできる力みたいなもので、一人につき、一つしか手に入れることができない。

 「ジョブ」によって使える能力「スキル」が異なっていて、魔法が他の人よりもうまく使えたり、剣術に磨きがかかったり、農作物の収穫量が増えたり、人によって様々である。

 あと、「ジョブ」は持ち主の成長に伴い進化するみたいで、進化したらその分、「スキル」が増えたり、より強力になったりするらしい。


「……。 私の『ジョブ』は『剣使い』です」


 ターラ先生が答えるとグレトくんはニヤリと笑う。


「へぇ~、ターラ先生は『剣使い』なんですね~」

「他に質問がある人はいますか?」


 グレトくんを無視して、ターラ先生が声をかける。


「は~い、なんでターラ先生は教師をしているんですか~?」


 またまた、グレトくんがニヤニヤしながら質問をする。

 すると、ターラ先生はグレトくんを睨み、口を開いた。


「その質問に答えるつもりはありません。 あと、特に大事な質問とか無さそうなので、今日はもう解散にします。 明日から、授業が始まるので、準備しておいてくださいね。 では、私は職員室に戻ります。 また明日会いましょう」


 そう言い、ターラ先生は教室を出ていった。

 教室には俺たち六人の生徒だけが残っている。

 ちなみに、この学校では五学年あって、一学年につき一クラスしかない。


「チッ、なんだよ、質問ありますかって聞かれたから、質問してやったのに……なー?」

「そうっすね~。 随分と態度の悪い人っすね~」

「むしろ、質問してあげたことに感謝するべきですよね」


 イラついた様子でグレトくんが喋ると、取り巻きっぽい二人の男子が賛同する。


「だろ~? これだから、『ジョブ』の弱いやつは嫌なんだよな~。 そんなやつが俺の先生とか嫌になるよ。 お前もそう思うよな?」


 気が良くなったグレトくんが俺に賛同を求めてくる。

 だから、俺は答える。


「正直、興味ないかな。 どんな『ジョブ』だろうと先生は先生だから、しっかり授業さえしてくれたらそれで良いよ」

「は?」


 どうやら、俺の答えが気に入らなかったようだ。 グレトくんが俺を睨むように見てくる。 んー、さっさと帰るべきだったなー。


「お前、あの女の味方をするかよ?」

「ん? 味方とか敵とか、そもそもなんでそういう話になっているのか、わからないなー」

「……舐めてる? 俺が誰か知らないのか?」

「ん? グレトくんでしょ?」


 俺がそう答えると、グレトくんはバンッと机を叩いて立ち上がる。

 そして、椅子に座っている俺を見下してきた。


「俺は貴族だぞ? この地域を管理しているフィード家の者なんだぞ? それが分かっているのか?」

「へぇー、そうなんだー。 でも、あくまで管理しているのは君の親であって、君じゃないでしょ?」


 グレトくんの顔が怒りで赤くなる。

 そして、俺の胸ぐらを掴んで、俺を立たせた。


「お前、痛い目見ないと分からないみたいだな」

「ふーん、やりたければやってみれば?」


 俺が煽ると、グレトくんが空いている手を振り上げた。 すると、グレトくんの掌に白く光る球体が現れる。 おそらく、魔法を発動したのだろう。 前にねぇねが見せてくれた魔法よりは小さいけど。


「お望み通りにしてやるよ!」


 グレトくんが俺に魔法をぶつけようと手を振り下げる。

 しかし、その魔法が俺に届くことはなかった。


「グレト様、す、少し落ち着いてくださいっす。 ここで誰か怪我をさせてたら、大問題になりますよっす」


 取り巻きの一人がグレトくんの腕を掴んで止めていた。


「……。 すーはー。 チッ、帰るぞ」

「は、はいっす~!」

「あ、はい!」


 グレトくんが大きな舌打ちをして、教室を出ていく。 それを追って取り巻きの二人も教室を出ていき、教室には俺と残り二人のクラスメイトだけが残った。

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