第7話 ねぇね落ち込んじゃった

「……ん」


 目を覚ますけど、眠い。

 って、あれ? 家?


「シクル! 目が覚めたのね!」


 お母さんが俺の顔を覗いてくる。

 あー、そういえば、ねぇねが魔法を暴発させて、俺が吹き飛ばされたんだっけ?

 それで、今俺はベッドに寝かされているのか……。


「うん」

「大丈夫? どこか痛くない?」


 お母さんが心配そうに聞いてくる。

 あれ? 体は痛くないぞ? 身体を起こしてみても全然痛くない。 意識を失う前は、全身が痛かった覚えがあるんだけど。


「えーと、一応大丈夫だよ?」

「そう、良かったー。 お医者さんの回復魔法で治してもらったのよ」


 そうか、魔法か。

 魔法があるこの世界なら、回復魔法があってもおかしくはないか。


「そう、なんだ」

「みんなに呼ばれて駆けつけて見れば、シクルが倒れてて……本当に心配したのよ?」

「その、心配かけて、ごめんなさい」

「うん、あまり無茶してはダメよ?」

「うん…」


 お母さんの怒るよりも心配するのが勝っているような表情を見て、申し訳ないと思ってしまう。


 それから詳しい話を聞いてみると、どうやら俺が意識を失った後、偶然村の人たちが近くに来ていて、ねぇねの泣き声を聞いて駆けつけてくれたらしい。 そして、医者とお母さんを呼んでくれたとのこと。 あと、意識を失っていたのは三時間ほどらしい。

 そもそも、ねぇねが見せてくれた魔法は学校外では、使うことを禁止にされていたらしい。

 まー、確かに明らかに攻撃するための魔法だもんね、あれ。 ただ、ねぇねだけ禁止なのは気になる。


 なので、それも聞いてみると、普通、ねぇねくらいの子どもだと、魔力量が少なくて、魔法を放つことすら出来ないらしい。 放てたとしても、すぐに魔法が消えてしまうし、当たったとしても威力がほとんどないとのこと。

 だけど、ねぇねは魔力量が相当多いらしく、危険なので魔法を禁止にされていたらしい。

 ねぇねスゲー。 それで、学校の授業でも褒められたらしく、ねぇねは見事に調子に乗ってしまったとのこと。


 ちなみに、そのねぇねはお母さんに叱られて、今は部屋の隅で縮こまって、下を見ている。


「パルン、そんなところに座ってないでこっちに来なさい」

「……うん」


 お母さんに呼ばれると、ねぇねは顔を上げ、コクリと頷き、こっちまで歩いてきた。


「ほら、シクルにごめんなさいしなさい」

「……ん。 その…シクル、ごめんな、さい」


 お母さんに催促され、ねぇねがポロポロと涙を溢しながら謝ってくる。

 確かに今回、ねぇねが悪いとはいえ、これは罪悪感がある。


 とりあえず、ねぇねを慰めることにしよう、うん。


「ううん、大丈夫だよ。 だから泣かないで?」

「でも……」

「ほら、怪我もお医者さんに治してもらったし」

「でも、シクル…死んじゃうかと思った…!」


 ねぇねがすごい泣く。


 そーか、自分のせいで、が死ぬかもしれなかったって思うと、そりゃあ、罪悪感すごいよなー。


「えーと、でもほら、今ちゃんと生きて――」

「でも……! 私があんなことしなかったら――!」

「パルン! 落ち着きなさい」


 ヒートアップしてきたねぇねをお母さんが止める。


「シクルが困っているでしょう?」

「……あ、ごめんなさい」

「謝るなら、シクルに謝りなさい」

「……シクル、ごめんなさい」


 また、ねぇねが謝ってくる。


「うん、いいよ」

「……」


 とりあえず、俺が返答してみると、ねぇねは学習したのか今度は黙ってしまう。

 えーと、どうしたらいいんだ、これ。 まだ、ねぇねは泣いてるし、本当にどうしたらいいの?


 この状況に困って、視線をお母さんに向けると、お母さんは察してくれたのか――


「ほら、散歩にでも行きましょう? あ、シクルはとりあえず、今は寝とくのよ?」


 ――と、ねぇねを外に連れていってくれた。


 うん、よかった。 とりあえず、俺は言われた通りに寝とこう。

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