第3話 三年経ちました
転生してから、約三年経った。 この三年間、本当に大変だった……姉とか姉とか姉とか。 我が姉、元気すぎ。 寝ている赤ちゃんを起こすんじゃない。 歩けるようになったからといって、すぐに走れるようになるわけじゃありません。 食事中、離乳食を無理やり口に突っ込んでくるんじゃありません。
まー、我が姉に悪気があるわけじゃないし、暴力を振るわれているわけでもないから、良いんだけど。
ちなみに、今は我が姉のおままごとに付き合っているところである。
「シクル?」
あー、あと、三年も経つと色々わかったことがあった。 まず、言葉が理解できるようになりました! いやー、やったね。 ついでに俺も喋れるようになりました! 赤ちゃんの頭って優秀なんだね。 色んな物を指差しながら、お母さんたちの言葉を真似していたら、覚えました! つまり、今の俺は優秀ってことだね!
「…シクル。 無視しないでよ…」
っ!? あ、やばい、脳内一人語りしていたら、我が姉をスルーしてしまった。
やばいやばい、我が姉がその綺麗な緑の瞳をうるうるさせておられる!
「あわわ、ごめんね、ねぇね、無視していたつもりはないんだよ?」
「……ほんと?」
俺は、慌てて我が姉の頭を撫でながら、スルーしていたことを謝る。
我が姉は撫でられていることに嫌がる様子を見せず、こっちを見つめてくる。 クッソ可愛いなおい!
「本当だよ。 だから、ねぇね泣かないで?」
「…うん! シクル好き!」
我が姉が俺に抱きついてくる。 うん、あれだ、俺、シスコンになるわ。
さて、気分を良くした我が姉とおままごとをしながら、脳内一人語りを再開しよう。
言葉を理解できるようになったことで、自分の名前もわかりました! 前世では「
ん? 名字? 無いよ。 どうやら、この世界だと名字は身分の高い人たちにしかないみたい。 つまり、俺は身分の低い人間というわけです。 はい。
「はい、スープ!」
そして、満面の笑みで、俺に木でできたおもちゃのお皿を渡してくる我が姉の名前は「パルン」という。
ちなみに、俺は「ねぇね」って呼んでる。 え? 脳内では「我が姉」だって? 3歳の幼い男の子が「我が姉」って言っているところ、想像してみ? 違和感すごいよ?
それに、我が姉自ら「ねぇねって呼んでね!」て言われているんだ。 これはもう、「ねぇね」って呼ぶしかないだろ。
ん? 呼び方統一してくれないとわかりづらい? 仕方ない、脳内でも「ねぇね」って呼ぶよ。
え、「我が姉」に統一しないのかだって? ねぇねから直々に頼まれたんだ、「ねぇね」って呼ぶのが当たり前だろう!
とりあえず、それは置いておこう。
両親のことだけど、お母さんが「ティクア」、お父さんが「ラディス」という。
お母さんは裁縫が得意な様で、俺やねぇねの服はお母さんが作った物である。
お父さんは剣が使えるようで、このおままごとグッズはお父さんが剣で、木をある程度の大きさに切ったあと、ナイフで形を整えた物をらしい。 実際に作っているところを見たことないから、本当かはわからない。
ただ剣自体はお父さんが自慢気に見せてくれた。 まー、その後、お父さんは「子ども前で剣を出すのは危ないでしょ!」ってお母さんに怒られていたけど。
そう、剣! この世界、一般家庭に剣があるのだ!
だから俺は、剣があるなら、魔法もあるだろうと思い、お父さんに「魔法ってあるの?」って聞いた。
そしたら――
「魔法? あるにはあるが、お父さんは使えないな~」
――って言われた。
魔法が存在する。 その事実だけで俺は喜んだ。 まさに剣と魔法のファンタジーな世界。 他にも色々すごいことがあるかも知れない。
だから、俺はお父さんに質問した――
「一夫多妻って合法なの?」
――って。
~あとがき~
一夫多妻が合法かどうか聞く三歳児。 マセてる…。
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