第13話 「もう……我慢できないです……」

「……さて、作戦はこうだ」


 俺たちはあの魔風竜の討伐に向けて準備を進めていた。


 作戦としては俺たちが魔風竜の動きを封じ、ツバサがエアーマグナムで頭部を吹き飛ばす……龍は再生能力が高いため頭を確実に吹き飛ばさないとすぐに再生されてこっちは消耗してしまう。


「なるほど……ツルギさんの作戦は理に適ってますね」


「はい!サラお姉様……え?」


「サラの言う通りだな………は?」


 そこにいたのはサラではなくユキだった。


「だ、だ、だ、誰ですかぁ!?」


「おい!サラが入れ替わっちまったぞ!?」


「あ、そういえば初めましてでしたね」


「私の名はユキ、サラのもう一つの人格です」


「えぇ!?」


「サラって二重人格だったのか……」


「サラがユキで?ユキがサラ?」


「訳がわからなくなってきましたぁ………ムキュゥ……」


 ツバサちゃんは困惑してぶっ倒れてしまう。


「あら?」


「ユキはツバサLOVEじゃないんだな」


「私はツルギさん一筋なので……」


「おい、誤解を生むようなこと言うな」


「ダメですか?」


「うっ……それは……」


 彼女の仕草にいちいち胸がドキドキする。

 そういえば指切りした時もこんな感じで俺はガッチガチだったな


「ま、まぁ、とにかく成功するかわからないが……やるしかない」


「みんな……反対はないね?」


「ツルギが言うならやってやろうじゃねぇか!!」


「一族の仇……! 取って見せます!!」


「ツルギさんを虜にできるなら……!」


「なんか1人だけ目的違くない?」


「あわよくばそのまま結婚を……!」


「なんか壮大になってません??」


 まぁ……みんな、なんやかんや協力してくれるみたいだしよかった。


「よし……出発だ……!行くぞ!!」


 俺たちはエウロスの里へ向かう。


「相変わらず雲の渦で包まれてるな……」


「ツバサちゃん……できるね?」


「はい!」


 ツバサちゃんは双剣を構え集中する。


「疾風連撃! 空烈斬!!」


 そう言うと風と風がぶつかり合い雲の渦を打ち消した!!


「やったぞ!!」


『グオオオオオオオオオオッ!!』


「この声……奴だ!!」


 天空から魔風竜が飛んでくる。


「ツバサちゃん!! 危ない!!」


 魔風龍はツバサちゃんを掴もうとするがスフィンが間一髪で救出する。


「大丈夫か?」


「はい……!」


『1人食い損ねたか……まあ良い!!』


「くっ!!」


「姉さん達を……返して!!」


『姉さん達? ああ、あの女どもか?』


『あいつらならこの俺様がお腹の赤ん坊ごと食っちまったよ……!!』


「………え」


『お前と私が最後の風人族だ……! 光栄に思うがいい!!』


「あ……あ……」


「どうだ?私と一つになれば風人族は永遠に不滅だぞ? 永遠にな……!」


「…………」


「どうした? 私と一つにならんのか?」


「もう……我慢できないです………」


 「なに?」


「絶対に……チリ一つ残さず……! 消し飛ばしてやる!!」


 急に人が変わったかのようにツバサちゃんが……いやツバサが暴言を吐く。


 俺も魔風龍の言葉には頭に来ている。


「みんな……全力でやるぞ……!」


「おう!!」


「ええ!!」


 スフィンとユキは勇者の能力を発動させる


「「「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」


 ツバサ以外の3人は魔風龍へ突撃していった。


 俺たちが時間稼ぎする間にツバサには魔弾をチャージしてもらう。


『フハハハハっ!!我に挑むか!?愚かな人間よ!』


 魔風龍が自分のスキルを発動させ、地面が抉れるぐらいの上昇気流が発生する……!!


 自分の得意な空中戦に持ち込むつもりだ……!


「こいつを受け止めてみろ!!」


「ライジング!!クラッシャーーーーーーーッ!!」


 スフィンがライジングクラッシャーをかますがあっさり避けられてしまう。


「雹弾千撃!!」


 ユキも雹弾千撃で足止めをする。


 その隙に俺がアーマーブレイカーに魔力を込めて赤熱化させ、奴を切り裂く!!


「何っ!?我が鱗に傷を!?」


「いまだ!! ツバサーーーーっ!!」


「そこっ!!」


 エアーマグナムから空魔弾が発射される。


「勝った!!」


 しかしその瞬間だった。


「ふん!!」


 奴が空魔弾を吸収した……!?


「はっはっはっ……!!私はこれを待っていた!!」


 すると魔風龍が変化し始める。


 みるみる小さくなりやがて人型となった。


「ふん……久しぶりの人間の体だ……!」


「あ……あ……」


 ツバサはショックと恐怖で体が動いていなかった。


「パワーはいいとしてスピードはどうかな?」


 するとやつは俺の前から消えた!!


「まずい!! ツバサ!!」


 すると急にツバサの前に奴が現れる。


「………!!」


「ふん……!消えてろ!出来損ないめぇ!!」


「ガハッ!!」


 彼女はみぞおちを殴られた後に思いっきり蹴飛ばされる。


「ツバサァァァァァァァァっ!!」


 スフィンが激情に駆られて奴に襲いかかる。


「スフィン!!よせ!!」


「たあああああああああっ!!」


 だけどスフィンのショーテルが奴に届く前に後ろへ回られてしまう。


「なっ……」


「正直このスピードには自分自身でも驚いているよ……!!」


 そのままスフィンは肘打ちでダウンさせられてしまう!


「スフィンさん!!」


「貴様もだ!!ユキ!!」


 奴は腕を構えると空気弾を出しユキを攻撃する


「きゃあああああああっ!!」


「ユキっ!!」


「最後はお前だ!!刀鍛冶!!」


 正直ここまで強いとが思っていなかった……俺の誤算だ……っ!!


「ちくしょう……!」


 それでも俺は抵抗しようとアーマーブレイカーを構える


「冥土の土産に貴様にいいものを見せてやろう!!」


 そう言うと奴はあの剣を召喚する。


「風伝説の剣……エヴロス………!」


「貴様の曾祖父が作ったものだったな? 実に良い出来だよぉ!!」


「……曾祖父さんを侮辱するなぁぁぁぁあっ!!」


 俺は怒りを抑えきれず奴に突っ込む


「バカめ!!」


 俺は相打ち覚悟で奴の懐へ突っ込む。


 多分これで倒せても俺は重症だ。


 エヴロスが俺に触れようとした次の瞬間だった。


 どこからともなく魔法弾が飛んできてエヴロスの刃を粉々にする。


「何っ!?」


「!?」


 そしてそのまま連続で奴の羽、腕、足、脇腹に傷をつけてしまう


「狙撃だとぉ!?どこからだ!?」


「………!! まさか!?」


 俺は後ろを振り返る……


 そこには地上からエアーマグナムで狙撃するツバサの姿があった……!!


「バカな……!?そこから我は遠すぎて視認できないはずだ!!」


「あいつ……!まさか風の流れで奴の動きを!?」


 ツバサの髪止めがパキンと割れ、髪の毛が緑色になりふわっと浮かぶ……!


「許しません……! 私の仲間を侮辱するのは……絶対に!!」


 そして彼女の額には東の勇者の紋章が浮かんでいた……!!



 次回 これが………! 私たちの翼!!

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