第4話 神話遺跡インドラ

神話遺跡……かつて神話の時代に存在した神殿の遺跡で、ダンジョンの中でもとびきり危険なことで有名な場所だ。

神話遺跡は今でも不明なことが多く『神話遺跡に入ったら身の安全は我々では保証できない』と冒険者協会に言われるほどだ。


3000年もの歴史を持つ冒険者協会でさえもわからないことが多い謎の遺跡……


俺の目当ては西の神殿の壁に使われている金属……『ライジウム』を採取しにきたのだ。


ライジウムは導電性が高く電気エネルギーの備蓄や放出もできる優れもの、ただ武器として使うには柔らかいため不向きで主に動力機関や装飾などに使われた金属という説が有力らしい。


ちなみにボルトショーテルに使われてるのは導電石という全く別物の素材で雷を纏うことで絶大な強度と切断力を持つことができる。

西地方で現在主流の剣の素材はこの導電石である。


「しかしなぜわざわざライジウムを取りに行くんだい?」


スフィンは馬に乗りながら俺に話しかけてくる。


「この地域は導電石を使った剣が主流だろ?だけど石だから鉄の剣と比べるとどうしても総合的に劣るんだ」


「けど雷を纏えば……」


「この地域の人間には雷を呼ぶスキルがあると思うけど、他の地方の人間は持ってないから雷が落ちる場所の真下にいる必要がある。」


「なるほど……雷はランダムに落ちるから纏うまでが大変なのか……」


「そっちも最近は混血の人間が増えてきているはずだ、混血だとスキルが母方と父方、両方のスキルを持つのは知ってるな?」


「ああ、」


「だけど人間はスキルを二つ持つと自分の体を維持するために両方のスキルが半分になってしまうんだ」


「スキルの暴走による肉体の崩壊を防ぐために?」


「ああ、人間は脆いからな」


「だから雷を呼び寄せるスキルも半分になってしまってる、つまり戦力がこの先低下する可能性もある」


「武器が使えない人間が増えるってことか……」


「そういうことだ」


会話をしていると神話遺跡インドラに到着した。


「ここが神話遺跡インドラか……」


「行こう!ライジウムを探しに!」


スフィンは奥へ進んでしまう


「あっ!待て!まだしっかり周りを調査しないと……!』


「早く来ないと置いてくぞーー!」


「全く……」


俺はスフィンに呆れながらも入り口へ進もうとする


キィィィィン……


「?」


なんだ……?なん音だ?


頭に響く不思議な音が聞こえてくる……遺跡だから何があるかわからないし警戒はしておこう……


「ギギ…………」


神殿に続く洞窟を俺たちは進む。


ガンガン進んでるが意外なことにトラップが発動しなかった。


壁をよく見ると毒の矢が飛んでくる穴があった、神殿とかによくあるトラップだ。

なのに発動しない。

理由は簡単、経年劣化で機能していないだけだった


「神話の時代となるとトラップすら動かなくなるのか……」


「なら安心だな!!このまま進もう!!」


「……」


(でも経年劣化にしては……おかしいな)


俺はなぜか動かないトラップに違和感を覚えるがそのまま奥へ進む


だんだん奥へと進むと綺麗に装飾された神殿へ着いた。


「すげぇ……」


あまりにも綺麗な内装に目を惹かれる。


驚くことに目の前にはライジウムの塊があった。


「あれは……ライジウム?」


「なら早速ライジウムを……!!」


スフィンはライジウムの塊を手に取ろうとする

その瞬間だった。


キィイィィン!!


また聞こえてきた……あの音だ……!


この音……羽音?

だとすれば………!!


俺は辺りを見渡す……しかしどこにも見つからない


(透明化する虫……!!"ヤツ"に違いない!!)


地面を見ると床の宝石の装飾に反射して姿が見えた。


ヤツはスフィンのところへ向かっている


「スフィン!!伏せろ!?」


「は?」


「そこだっ!!」


俺は、魔法陣から売る用の剣を取り出し投げつける。


そして見事に透明化したヤツの体を貫く


「ギエエエエッ!?」


するとモンスターの透明化がとけ地面に落下し暴れ出す。


「なんだこいつ……!?」


「神殿寄生虫………スクーヴ!!」


「スクーヴ!? 神殿に巣喰い、神の力を吸収するという……?」


「ああ、まさかのだ」


まさかこの神殿に生き残りのスクーヴがいるとはな………

そんなことを考えてるとスクーヴが空中に浮き戦闘体制になる


「くるぞ!!」


「キシャアアアアアアッ!!」


スクーヴは雷のようなスピードで襲いかかってきた。


「ぐあああっ!?」


スフィンは反応が追いつかず吹き飛ばされる


「スフィン!!」


スクーヴはギロッとこちらを睨む。

どうやらさっき剣を刺したことを相当恨んでるらしい。

ヤツの眼中には俺しかいなかった。


「シャアアアアアアッ!!」


今度は腕の鎌と毒針を持つ尻尾を地面に突き刺し、直立になる


(何をする気だ………?)


俺はアーマーブレイカーを取り出し身構え警戒する

スクーヴは大きく口を開き周辺のライジウムからエネルギーを集める


(まずいっ!!)


その瞬間だった。

スクーヴは口から電撃を発射、神殿の壁を大きく吹き飛ばした。


ギリギリで回避できたが足が瓦礫に挟まってしまい動くことができない


「くそっ!!」


なんとか脱出しようとする。


だが、スクーヴはもうすでに次弾の準備をしており今から脱出しても間に合わない……!!


(ここで終わりか……!)


スクーヴが電撃を発射しようとしたその時……!


突然スパッとヤツの腕が切れてしまった。


バランスを崩しスクーヴは倒れ込む。


「スフィン!?」


「大丈夫か?ツルギ」


「あ、ああ」


よく見ると額の紋章が輝いていた。

あれは西の勇者の紋章だ……!間違いない!


「ギエエエエッ!!」


ショーテルで俺の足を挟んでいた瓦礫を破壊する。


「スクーヴ!!貴様は大きな間違いをした!!」


「ギエッ!?」


「僕の友に手を出したという大きな過ちをな!!」


「ギギ!ギエエエエッ!!」


またイナズマのような速度で襲ってくる。

しかしスクーヴは一瞬で胴体をズタズタに切り裂かれ最大の武器である毒針を持つ尻尾も真っ二つに切られていた。


ほんの一瞬の出来事だった。

見えなかった。

これが勇者の力…………!


「ツルギ!!俺のショーテルじゃヤツの外側にしか攻撃を与えられない!!」


「じゃあどうすれば!?」


「お前のナイフで脳天をブッ刺してやれ!!俺が行動不能にする!!」


「わ、わかった!!」


スクーヴは羽を広げ逃走を図る。


「キシャアアアアアアッ!」


「逃すかっ!」


スフィンは特殊な構えを取る。


『大雷撃!!ボルトクラッシャー!」


ショーテルから出現した雷の刃がスクーヴの胴体と羽を切り裂く。


「今だ!!」


俺はスフィンを踏み台にし大きく飛び上がる


「うおおおおっ!!」


「キシャアアアアアアッ!!」


そしてついに俺のアーマーブレイカーがヤツの頭を貫いた!!


「ギヤアアアアアアッ!?!?」


俺はすぐナイフを抜きスクーヴを押し出して距離を取る。

案の定スクーヴは大爆発した。


「やったぞおおおおおお!!」


スフィンは嬉しそうに叫ぶ。


「はぁ……死ぬかと思った……」


『聞こえてますか?』


「だ、誰だ…!」


『私の名は西の女神インドラ、この神殿の主です』


『ありがとう、スクーヴが取り除かれたことで私は再び現世と繋がれました』


『スフィン、あなたは立派な西の勇者です』


「そ、そんな!?こ、光栄です!!」


「ツルギさんも……あなたのおかげで彼は勇者へ覚醒を果たしました」


「いえいえ、逆に僕は足を引っ張ってましたよ」


『これからあなたたちにお話ししなければなりません』


『この世界を蝕む闇のことを……!!』


「闇………?』


突如女神から告げられた闇の存在。

俺たちはそこで衝撃の事実を知ることになる。


次回 完成! ライジングショーテル!!

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