第47話 彼女が、あの有名な!?
「良いわ!ファトゥに思い出して貰うついでに名乗ってあげる。私は」
「君がデオ•ブランドーだね!」
「はい?」
「そういう君はオジョウサン•ジョースター…」
「名乗りを邪魔された挙句何か始まったんだけど!?私の話を聞きなさいよ!」
てっきりそうだと思ったのだが…違うみたいだ。
ファトゥと残念そうに肩を落としながら、咳払いをした緑髪の狼少女へ向き直る。
「私はテハヤ。魔獣軍の…」
テハヤは自信満々に胸を逸らして名乗りを上げる。因みに自信に比例してその胸は控えめだ。
ファトゥと知り合いというくらいだ、幹部クラスと見て間違いない。
「根城である魔王城の受付嬢よ」
「幹部じゃないし区切った後が長すぎるだろ!?」
「因みに幹部だから」
「幹部かよ!何で幹部が受付嬢やってたんだ!」
「誰も来ないからのんびりお昼寝し放題で…」
「やる気ゼロかぁ…」
随分と可愛らしい受付嬢がいたものだ。
弓を片手で持ちながらてへへとはにかむテハヤは、すぐに首を横に振って元の毅然とした雰囲気に変わると蒼い瞳を細める。
「この前、魔王様から言われたのよ。勇者の様子を見て来いって」
「なるほど。だから俺を」
「ギャフンと言わせることにしたわ」
「なぁしてぇ!?」
「だって様子を見て来いってそういうことじゃ…私魔獣軍の幹部で、貴方は勇者なのよ!?」
……。
「そ、そうか!おかしくないのか!!」
「貴方本当に勇者…?」
ファトゥたちと一緒にいるから、全然危機感を感じていなかった。
本来俺たちは相反する立場にあるのだということを。
わなわなと打ち震える俺の方に、ポンと誰かの手が乗せられる。其方を見ればそこには優しい…いや生温かい目を向けるリィの顔が。
「…勇者」
「やめろ!それ以上言うな!そんな目で俺を見るなぁ!」
その目はファトゥを見る時と同じで。
嫌な予感に全力で止めると、今度は足にやわらかな感触が。
其方を見ずとも分かる。これは…クゥの足。
『クゥ』
「ぐわぁぁぁぁ!!」
俺はどうしてか分からないけれど居た堪れなくなり、膝から崩れ落ちた。
「うぅ…あんまりダァ…」
「ねぇファトゥ。勇者って聞いてたよりも何ていうか…可哀想なのね」
「勇者も一生懸命なんだにゃ」
大ダメージに悶える俺を見て、ファトゥたちがやれやれとした雰囲気で言葉を交わす。
「何だか毒気が抜かれたわ。今回は見逃してあげる」
「ありがとう…俺、勇者としてちゃんと和平成功させるから…」
「和平?何よそれ」
「ファトゥたちは勇者と一緒に、魔王様に会うために旅してるの。そして魔王様に会ったら和平を成立させて勇者に生涯魚をたらふく食べさせてもらうにゃ!」
「そういうこと。道理で、貴女も彼女も勇者を狙わないのね」
後ろ手に手を組むファトゥと腕を組みながらもちゃんと話を聞いてあげるテハヤは、何だか仲の良い友人のように見える。
リィとクゥに支えられながら立ち上がった俺は話の訂正がてら口を挟んだ。
「厳密には魔王ミィのところへ連れて行き和平を成功させたら沢山魚を食べさせる、だ。
決して生涯の約束はしていない」
「「駄目なの?」」
「駄目ではないが…そんな金は無いぞ」
正直、和平を成功させたら俺は日本に帰るのかどうかもわかっていない。
まだ、迂闊にはその後の話は出来ないのである。
「うーん。そんな甲斐性があるようには見えないけど」
「冷たいな!?」
「まぁ良いわ!そういうことなら私と勝負しましょ。貴方が勝ったら、和平の手伝いをしてあげる」
「ほほう…」
勝負と聞いて、俺は思わずテハヤへと視線を凝らした。
動きやすそうなインナーに胸当ての籠手の最低限の鎧、短いスカートの下はチラチラとスパッツのようなものが見え隠れしている。
そして緑色の髪と狼の耳尾は、申し分ないほどのもふもふ。
「勝負は野球拳でいいんだよな!?」
「ダメよこのすけべ!」
「じゃあもふらせてくれ!」
「最早勝負じゃないわ!?」
俺の中の狼も騒ぎ出したが今回もお預けらしい。まぁ、健全じゃないと怒られちゃうからね!
「勇者。勝負終わったら覚悟するにゃ」
「ち、違う…誤解だ…」
他の誰よりも、真っ直ぐ爪を揃え背後から俺の首筋に押し当ててくるファトゥに…な。
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