第41話 此処はどうでしょう?

「勇者様、どうぞお元気で!」

「お付きの皆様もご武運を!」

「ありがとう衛兵さん。また会う日まで!」


キャンプ用品を揃え、残金3,000円となった俺たち。


店員さんにナップサックに掛けてもらった収納魔法でキャンプ一式を収納し、それを俺が持つことにより俺の荷物は腰のポーチと肩に背負ったナップサックとなる。


そうして増えた荷物を握りしめながら、衛兵たちに見送られてクトスの待ちを後にした。


「さぁ皆!良いキャンプ地を探そうか!」

「キャンプ値?」

「いやそんな理論値みたいな奴じゃなくて」

「昆布茶♪」

「それは美味しい飲みもn待ってこの流れは良くない!」

『クゥ』

「KUMAAAAA!!」


勇者、発狂。


その後旋風な陣のような暴れ方をして落ち着いた後、俺たち勇者一行は穏やかな風の吹く草原を歩き出していた。


方角は北。次の街サンカバルは比較的海が近く、魔獣軍や魔物の影響を受けづらいので安くで美味しい魚にありつけることで有名らしい。


しかも街の大きさはクトスの倍。国王の王国(ややこしいな)に匹敵するとも聞いたが…楽しみだ。


「改めて、良いキャンプ地を見つけたら教えてくれ」

「それならあるにゃ!」

「本当かファトゥ!?」


ええいこいつめ!勿体ぶって言わなかったな!?可愛い…と褒めてやりたいところだ!


実は優秀なのかもしれない、隣で紫水晶の瞳を輝かせるファトゥは意気揚々と……空を指さす。


「空中なら絶対魔物に襲われないにゃ!あいつら目の前しか見てないから、上は絶対気にしない!」

「ファトゥ…。何か可愛いから、これからファトゥちゃんって呼ぶね」

「急に何で!?」


どうだ!とばかりにむふ〜と鼻息荒く胸を張る姿は、可愛らしいという他ない。


こういうの何と言うんだったか…そうそう、アレな子ほど可愛いってね?


リィから呼び方変更のお達しを受け驚くファトゥ。


「じゃあファトゥ。これ渡すから立ててきてくれないか」

「高いところは苦手にゃ」

「猫なのに!?」

「勇者。絶対ツッコむところはそこじゃないよ…!」


そんな彼女にキャンプセットを手渡そうとするも、少し怯えるように身を縮こませるのでそれは諦めた。


まぁファトゥの冗談---冗談だよな?---はさておき、遠くに茜に染まる山を眺めながらそよ風の吹き抜ける草原を皆で並びのんびり歩く。


「今夜のご飯はキャンプセットと一緒に買ってきたから心配ないが…やはり野営地は拘りたいところだよな」

「木の上とか良いんじゃない?」

「魔法の木の家みたいで面白そうだ!」


リィがふわふわのリスの尻尾を揺らしながら楽しそうに木を指差すので、なるほどと頷きを返す。


想像してみると実に面白い。


が、流石に三人と一匹を支えられる木の枝は滅多に見つからないだろう。


「もしくはクゥの背中とか」

『グゥ?』

「良いね」

『プゥ!』

「そうするかにゃ!!

『クゥ!?』

「じゃあちょっと、元のサイズに戻ろうね〜♪」

『ガゥ〜!』


嫌だ嫌だとリィの腕の中で暴れ回るクゥ。


良い案だと思ったのだが、嫌がるのであれば仕方あるまい。


今度こっそり試すとしよう。


『ウ"ゥ!』

「あっバレた!」


ぴょんと此方の肩に飛び乗ったクゥがぐりぐりと熊の手を頬に押し付けてきた。


どうやら顔に出していたみたいで、もう少しポーカーフェイスを学んでも良いかと思った。


「あ、勇者!あの森の中良いんじゃない?」

「どれどれ?ほう…大したものですね」


被った布の下でピンと耳と尻尾を立てて指差したファトゥ。


今度は空中ではなく、しっかりと森の中それでいて程良く空間が開いていた。


キャンプにはうってつけだろう。


「それじゃあ俺たちは、あそこをぉキャンプ地とぉする!」

「やったにゃ!」

「キャンプ楽しみだね、クゥ」

『クゥ♪』


万歳三唱して喜ぶと、俺たちは小走りでその森へと駆け出すのだった。


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