第39話 緩い世界でキャンプ!略してゆるキャ(ry

「そろそろ次の街へ向かうかなぁ」


リィとクゥがベッドの上ではしゃいでいるので、のびのびとゆっくりできるよう俺は部屋に備え付けの1人用の椅子に座っていた。


彼女たちもまた、ファトゥと同じでダンジョンやら洞窟暮らしだったからな。のびのびとリラックスしてもらいたい。


そんな中何となく明日以降のことを考える。


「でも勇者、魔王城の方角分かったにゃ?」

「そこなんだよなぁ…」


ひょこっと横からファトゥが覗き込んでくる。彼女の一言に自然と唸り声が漏れながら、俺は重々しく頷いた。


クトスでクエストをこなす日々も悪くないけれど、勇者がいつまでも歩みを進めないのも良くない。


魔王ミィからのご褒美もあったし…あぁ、またモフモフしてもらえないだろうか!


「勇者、まただらしない顔になってる…」

「おっといけない」


涎を拭い思考を戻す。


先を急ぎたい気持ちが無いわけではないが、今の資金では次の街へ行けても宿を確保出来るか怪しいところ。


次の街の宿がここの倍あったら、何とか彼女たちだけ泊めて俺は野宿という最終手段を取るしか無い。


出来ればそれは避けたい…しかし、明日もまたここに泊まるとなればお金が掛かる。


「まさかこの世界でもお金に悩まされることになるとは…」


1日に受けるクエストの数を増やすしかないか?


次こそは真っ当に魔物を討伐できるかもしれないし、もし素材を持ち替えればお金に変えることができるかも。


「勇者って違う世界から来たんだよね〜?」

「そうだよ」


あれこれ思い悩んでいると、不意にリィが勢いよく体を起こして背筋してるみたいな体勢で俺を見る。


「リィ、勇者が此処に来るまでのお話聞きたいな!」

「確かにそうにゃ!ファトゥも知らない…聞かせて?」

「ふむ」


明日は明日の風が吹くというしまた明日考えるかな。


何とかなるだろう…そう思って、俺はフッと笑う。


「良いだろう。何処から聞きたい?」

「全部!」

「俺は横浜にある病院の産婦人科で…」

「誰が誕生から話せって言ったにゃ!」

「ごめんなさい!全部って言われたから!」


リィに言われるままに俺の生い立ちから話そうと思ったら、ファトゥに鞭がしなるような音を響かせながら床を尻尾で打ち付けられた。


おっかなびっくりである。


「ま、まぁ冗談はさておき。シンプルな話だ。昔飼ってた猫とそっくりな猫を追いかけてたら、車に轢かれそうだったのを助けて」

「うんうん」

「俺自身も轢かれそうだったけど、その瞬間におっさ…王様に召喚された。んで、何やかんやあって今に至る」

「……そんだけ?」

「いや、だって俺こっちに来てから3日程度だし何なら初日にファトゥと会ってるから語ることもないし」


此処に召喚されるまでの一部始終を話し終えると、ファトゥとリィ果てにはクゥにまで目を丸くして意外と言う顔をされてしまった。


というか、振り返って思ったがかなり濃密な3日間だな…冒険に出たと思ったら仲間が眠らされるし、魔王と幹部に会うし和平のために一緒に旅することになるし。


今じゃ魔獣軍見習いのリィとクゥまでもパーティに加わっている。


最初は敵対することになって絶望したが、何だかんだで仲良く出来ているのは幸いだ。


いっそのこと、明日クエストを受けて報酬を貰ったらキャンプ道具を買い揃えて街から街へのキャンプ生活も良いかもしれない。


「それじゃあお三方」

『?』

「キャンプって…興味ないか?」


キャンパーおじさんと呼ばれそうな発言と共に、明日の予定を相談し始めるのだった。

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