第36話 ロリよりも胸よりももふもふだ!…きっと
「勇者様。あんたロリコンかい?」
「何てことを!?違いますから!」
「そうかい、なら良かった」
少しずつ人の増え始めた酒場へ俺たちも降り席へ座ると、丁度注文の合間らしい女店主が小声で話しかけてきた。
開口一番人聞きの悪い内容で。
火傷を負っているという話のため布を被ったままのファトゥ。そんな彼女と賑やかに談笑しながら、時折足元のクゥにもご飯を分けるリィ。
彼女たちを見ながらの発言に、流石に俺も動揺を隠せない。
「まぁ冗談はともかくとして」
「本当に冗談ですよね?」
「勇者様は訳ありの女の子ばかり集まってくるねぇ。趣味かい?」
「誤解ですぅ!!」
ま、まだ2人目だし!厳密には2人と1匹だが。
「勇者、食べないのにゃ?」
「一緒に食べようよ〜」
『クゥ!』
「勿論食べる。折角の稼ぎだからな」
今回貰えた報酬は7,000円だった。
狼は目撃されただけだったのに対し、今回の熊型の魔物つまりクゥは明確に魚を食い漁るという行いをしていたこともあり、報酬も少し高めに設定されていたのである。
しかし、次は魔物討伐以外のクエストを受けてみるかな…俺の中で俺はもしかしたら戦闘が出来ないのでは説が浮かびつつあるし。
「ま、勇者様は悪いことはしないか」
「おぉ!分かってくれましたか。良かった良かっ」「罪の意識に苛まれた自分を想像して出来なさそうだからね」
「否定はしませんが!もっとこう、手心と言いますか…」
ひらひらと手を振りながら、次のお客さんの方へと向かう女店主。
あの人には勝てる気がしない…その背中へ畏敬の念を送りながら安かった鶏の肉料理を一口食べた。
「うん、美味しい!」
「勇者。本当にトーファたちだけ魚を食べて良かったの?」
「構わない、昨日は魚で取り合いになったし。それに今日は本当に肉を食べてみたかったからな」
「そっか…ありがとう!」
夢中で元気に机の上の魚料理を食べ進めるリィたちを見ながら、心配そうに声を落とすファトゥに肩を竦める。
とまぁ格好付けたは良いものの、肉を食べたかったと言うのは本音の半分。
もう半分は、俺だけでも食費を抑えないと稼ぎが吹き飛んでしまいそうだったからだ。
「あ、トーファのお魚も〜らい♪」
「にゃにゃ!?よくも、大事に温めておいたお魚を〜!」
「ん〜こっちも良い塩味!ほら、リィのお魚あげるから。甘くて美味しいの」
「どれどれ…あむ。うん、これも行けるぅ!」
所狭しと並べられた料理を堪能する彼女たちを見れば、膨れるものはお腹だけではない。
だから、俺はこの一皿の幸せを噛み締めるとしよう。
明日はさて、どうしようか。
……俺が食べている肉料理の2倍のお値段はする魚料理をお代わりする、ファトゥとリィの声から意識を遠ざけながら必死に考え込むのだった。
〜〜〜〜〜
「なぁ、クゥ」
『クゥ?』
「俺たちのパーティ…ポーションとか要るか?」
『……ガゥ』
「だよなぁ」
稼ぎの半分が消し飛んだ衝撃の晩御飯を終え、先にファトゥとリィにお風呂を譲った。
もふもふが目の前で復活する様を見せつけられた後にお風呂場へと消える、一種の生殺し状態に陥るも気合いで復活。
ベッドにクゥと向かい合って座りながら今後のことを相談していた。
ハッキリと言葉が聞こえるわけではないけれど、何となくは理解できるので会話は成り立っている…と信じたい。
「ガゥ」
『グゥ』
「ガゥ!」
『プゥ?』
「グゥ〜」
『ガゥ!』
伝わってるのか分からん。
やはりクゥ言語の習得は難しい、お風呂から上がったらリィに聞いてみるか。
「勇者、もうクゥちゃんと喋れるんだ!すご〜い♪」
「おぉリィ。丁度良かった、クゥともっと話すに、はッ……?」
「?」
不意に背後からリィの声が聞こえたので其方を振り向く。
すると、そこには。
「どうしたの勇者。お目々まんまるだよ」
バスタオル一枚を適当に巻きつけただけの、幼い背丈と裏腹に艶やかな谷間のギャップで背徳的な匂いのするリィが前屈みに立っていた。
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