第15話 生きてるぅ〜^^

「ところでファトゥ」

「にゃ」

「どれくらい見えるようになったんだ?」

「カジノで大儲けできるくらいかな!」

「是非とも教えてくれ!!」

「勇者が賭け事しても良いの〜?」

「人生はギャンブルZOY!」

「勇者じゃなくて陛下だった!?」


案の定ダンジョンのマップをあまり覚えていないファトゥと共に、ひとまず来た道を戻るように歩く。


道中ひたすらに走っていても他のトラップには見舞われることは無かったため、焦る必要も警戒する必要もない。


だから俺たちは先程の疲れを癒しがてら歩いて探索している、というわけだ。


「しかし、どうやってファトゥはあのトラップを設置したんだ?」

「あれはこう…よいしょ〜!と鉄球を投げて」

「絶対嘘だろ!?」

「バレたにゃ!」

「さっきから騙しすぎじゃない?」

「これが本当の猫騙し♪」

「うーん可愛いから許す!」

「チョロチョロ…」


最後に何か聞こえた気がするが、くいっと手を丸めてウィンクする仕草が可愛かったのできっと気のせいだろう!


可愛いは正義、そして獣耳と尻尾は可愛いつまりは正義なのである。


「まぁ本当のところは元々この遺跡にあった仕掛けを、ちょちょっと改造したんだ〜」

「意外と器用なのか、君って」

「一言余計じゃない!?」


心外とばかりにファトゥが目を丸くした。


ピーンと伸びる尻尾で、本当に驚いているのだと分かる。


「さあて。早く上への道を見つけなきゃ」

「話逸らすにゃあ!」


ブンブンと腕を振って追いかけて来るファトゥ。


大分体力も戻ってきたらしい、そのことにホッとしながら俺はわざと付かず離れずの速度で小走りして逃げ出した。


「ま〜て〜!」

「ハハッ♪」


甲高い声をあげて笑う俺と、腕を振り上げたままパタパタと走るファトゥ。


波打ち際で水着姿なら様になったのかもしれないが、残念ながらまず追う側と追われる側が逆だと思われる。


それに此処は薄暗いダンジョンの中であり俺は鎧と剣を纏っていて、ファトゥも機能性重視の実戦的装備。


とてもではないがカップルの雰囲気ではないな…。


勇者と魔獣軍の幹部としては、まだ正しいのかも?


「もしごめんなさいを言わないと〜!」

「ん〜?」


そんな時、後ろからファトゥの声が響いた。


「勇者が生きる気力を無くすまで冷たい視線を向けるにゃ」

「ごめんなさい!!」


ズサァ!と軽く後を引きながら土下座を決める。


もふもふと敵対する立場にあるってだけでも辛い運命を背負わされているのに、こんな空間の中でそんな視線に晒されたら俺は日の目を見れなくなるのは確実。


「うむうむ。勇者の扱い方、だんだん分かって来たよ」


そんなことよりも違うことを覚えるべきじゃ…とも思ったが、そんなことを言ったら本当に冷たい眼差しを頂戴する気がしたのでグッと飲み込んだ。


それからも暫くファトゥとふざけたり他愛もない雑談をして進んでいたら、やがて上へと上がる細い階段を見つけ。


「戻ってきた〜!」

「一時はどうなるかと思ったぜ…」

「まだそこまで遅くないはずだよ?」

「いや本当の時間ではなくて」

「体内時計は正確だから安心して!」

「もしも〜し?貴女の中に俺はいますか〜?」


漸く、外からの月明かりが差し込むフロアまで俺とファトゥは戻って来たのだった。

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