第13話 これは罠だ!!
ファトゥのご厚意に甘え、ダンジョンに一泊させてもらうことした俺だが…よく考えると仕事人が過ぎるよな、ダンションに寝泊まりなんて。
まぁお金も無いし此処は入り口あたりの安全な場所で寝させてもらおう。
明日から、本格的に冒険という名の路銀稼ぎだ!
と思っていたのがついさっきまで。
今はというと…。
「うおおおおお!!」
「何でこうなるのかにゃぁぁ!?」
巨大な鉄球にファトゥと二人で追いかけられていた。
どうしてこうなったか、それはおおよそ十分前に遡る。
〜〜〜〜〜
「ここだよ!」
「おぉ…正にダンジョンって感じだな」
夕焼けが宵闇に変わりつつある空の下、ファトゥに案内されたのはザ•ダンジョンとばかりに盛り上がった岩の前だった。
その中に吸い込まれるような階段が奥へ奥へと続いてる。
確かこの世界のダンジョンは、魔獣軍に召喚された魔物が遺跡とかに棲みついたものだったはず。
ということは…。
「なぁファトゥ」
「ん?」
「この中って魔物とかは…」
「あぁ、大丈夫!ちゃんと追い出したから!」
「それなら安心、んん?」
一度頷いてから二度目頷こうとして、途中で首を捻る。
「追い出したって、どういう?」
「そのままにゃ。狼とか熊とか…他にも色々沢山いたけど、全部頑張って追い出したの!だから安心して寝泊まり」
「出来ないが!?いや出来るには出来るが、この辺りでクエストが生まれている理由って」
「多分ファトゥが追い出した奴らがやんちゃしてるね⭐︎」
「コラァ!!」
この子、天真爛漫な笑顔しながらバッチリ結果的でも悪さをしていた…!
大きな負傷者の話が街の中でも聞かなかったのは、魔物が統率の取れないただの獣って感じだからかもしれない。
「流石にそれは…勇者としてお仕置きしないといけないなあ!」
幾ら可愛いもふもふの女の子と言えど、それでお咎めなしは勇者として如何なものか。
「な、にゃっ!?ごめんなさい!痛いのは許して〜!」
「成敗っ!」
「ひぃっ!」
ペチン。
「……にゃ?」
俺は…ファトゥの可愛い額に軽くデコピンを食らわせた。
「これからはお魚以外のことにも気を付けないとだぞ。人間に危害を加えるつもりが無いなら、尚更だ」
「……うん、気を付ける」
両手で大袈裟に額を抑えながらくすっと微笑むファトゥに頷き、ふと視線を逸らして考える。
魔獣軍…基本的に魚ばかりを狙って、人間そのものに危害を加えるつもりはない。
魔物を呼び出した目的は不明だけど支配しているわけでもなく、言うことを聞かせるには餌付けが必要。
ファトゥたち魔獣軍が生まれた理由って何だ…?
魔王ミィに会えば分かるだろうか。
「やっぱり、彼女に会うのが最終目標だな…」
「あれ?勇者って彼女居たの?」
「違う違う。魔王に会って和平結べたら良いなって」
「なるほど…ファトゥも魚を堂々と食べられるようになったら、嬉しいにゃ♪」
ゆらゆらと黒い尻尾を揺らすファトゥに微笑みながら、ダンジョンへと足を踏み入れる。
階段を下り切って…迷路のような内部に入って最初の一歩。
カチッ。
「カチッ?」
ファトゥと並んで歩いていた俺の足元で、何かのスイッチが押された音がする。
ガタン!と地面が突如斜めになり踏ん張る暇もなくズルルル〜!と暫し滑り落ちる。
「ぬぁぁぁぁ!」
「にゃぁぁぁ!」
ドサッと俺が先に下に着きその上にファトゥが乗る形で滑り終えると、足場はあっという間に上へ上がり…天井と同化してしまった。
真っ暗闇の中で辺りを見回していたら、ゴゴゴと何かが近づいてくる音に身構える。
「あっ、忘れてた」
その瞬間、ポンと手を鳴らして不吉なことを言うファトゥ。
迫り来る嫌な予感から目を逸らしたくて、何とかファトゥの方を向いて聞いてみた。
「何を、ですかね…?」
「えっとね。魔物がまた増えても面倒だから…中をトラップだらけにしてたんだ♪」
遠くに見えたそれは、俺たちをあっという間にペシャンコに出来そうなほど巨大な鉄球。
「……君はもっと魚を食べるべきだぁ!!」
「ごめんなさいにゃあ!」
俺とファトゥは迫り来る脅威から逃げ延びるため、一目散に逃げ出した…という訳である。
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