第8話 な、何ぃ!?伝説のあの!?
「まぁシュールストレミングよりも酷いギャグは置いておくとして」
「言い過ぎじゃない?ねぇ言い過ぎじゃない!?」
3日間匂いが取れないどころか、俺は今3日間くらい寝込んでしまいそうなんだが…。
あと、こっちの世界にも存在するのか?
或いは現地の食べ物の名前を自動翻訳したら、俺の世界におけるそれに行き当たったのかもしれない。
「ファトゥとしても痛いことせずにお魚さんが手に入るなら、会わせてやっても良いよ?」
「本当か!」
気になる翻訳の仕様が出てきたが、華麗にスルーされたしファトゥの色良さげな返事が返ってきたので俺も流して反応する。
「でも、条件がある!」
「魚ならないぞ?」
「それはもう聞いたから…」
「高菜もないな」
「要らないけど?」
「野菜もちゃんと取らないと栄養偏るぜ!」
「話聞く気ある!?」
おっと、少しやり返しすぎたみたいだ。
コホンと咳払いで誤魔化してそろそろ話を進めることにした。
「条件って?」
「うん。それは…ファトゥと勝負しよう!痛いのはなしで」
「気持ち良いのは」
「規約的にダメ」
「oh…」
世知辛い世の中である。
「うーん、その条件で勝負となると…」
ふと、黒髪と猫の耳と尻尾を持つファトゥを見る。
スタイルは…手足も平均的で体も絞っているのかお胸もバストもボインも細く
「今失礼なこと考えてない?」
「滅相もございません」
少し思想の自由を楽しみすぎた…気を取り直して。
今の彼女の反応を見て、野球拳を冗談で提案しようとしたがやめておいた方が良さそうだ。
此処は伝家の宝刀を出すしかない!
「じゃあファトゥ」
「ん?」
「じゃんけんで勝負しよう!」
「じゃ、じゃんけん…だって!?」
「そう。じゃんけん」
ジャジャン拳はされたら勝てないのでじゃんけんで。
紫水晶のように煌めく瞳を見開き、驚きを露わにするファトゥ。もしかしてこの世界にはじゃんけんがないのか…?
或いはこう、もっと神聖な場でやることだったり。
「まさか人間にもじゃんけんを使える奴がいるとは!流石は勇者だね」
「どうやら俺の知るじゃんけんじゃないみたいだな…」
「にゃはは、冗談冗談。勇者はボケよりツッコミ担当の方が向いてると思うよ」
「そりゃどうも」
多分ボケというよりダジャレのセンスの問題、あぁいや自分で言ってて悲しくなってきたな…。
「でも良いの?ファトゥ、運は良い方だけど」
「へぇ。魔法で上げてるとか?」
オッサンと魔王ミィしか使ってないから忘れがちだけど、この世界にはちゃんと魔法もある。
どんな魔法があるかは教えてくれなかったんだよな…説明めんどくさがったろ、絶対。
だから、俺が知らないだけで幸運を付与する魔法とかあるのかと純粋に気になったから聞いてみた。
「へ!?も、ももも勿論!魔法、魔法使えるからな〜ファトゥも!うんうん!」
「?」
その瞬間ファトゥは壊れた人形のようにカタカタと震え始める。一体どうしたのだろうか?
「…いや、よく考えれば勇者にバレても問題ないか。悪い奴じゃないし」
「良い人認定してもらえるのは嬉しいけど…どうしたんだ、ファトゥ。幸運の魔法って何かまずいものなのか?」
「ううん。幸運の魔法は普通の魔法、教えてもらえば勇者でも使えるよ」
「なら」
尚も逡巡する様子を見せていたが、やがてしゅんとしながらファトゥはこう言った。
「実は…ファトゥは、魔法が使えないの」
「へ〜」
「へ〜!?」
「おっと、勘違いしないでくれ。これは20へぇ相当だからな」
「わぁい高得点⭐︎じゃなくて!」
急にガウッ!と詰め寄られ、寧ろそっちの方に俺は軽く面食らった。
「魔獣軍って魔法使えないと入れないのか?」
「違うけど。魔法使えなかったら、ただの獣軍じゃん」
「なるほどねぇ…」
ファトゥは魔法が使えない。だから、魚を奪うときは思い切り速く動いて加速の魔法を掛けているように見せていたのだとか。
「ファトゥが魔法で悩んでるのは分かった」
「本当?ありがとう、バカにしないでくれるのは嬉しいな」
「バカにしたり揶揄ったりはしないさ。とりあえず、つまりは真剣勝負ってことだろ」
腕を伸ばしたり両手を組んだままぐいぐい解すようにくねらせながら、口角を上げて笑う。
「負けないよ〜!」
ニヒッと可愛らしい笑顔を見せて尻尾をゆらめかせたファトゥと、数秒見つめ合い…そして動いた。
「「最初はグー!じゃんけん…!」」
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