第20話 再会
「水城さん!」
藤原くんが駆け寄ってくる。涙は未だに私の頬を伝っていた。私は駆け寄ってくる藤原くんを呆然と見つめていた。
藤原くんが近づいてくると、呆けたように私の唇から言葉が漏れた。それは、疑問の言葉だった。
「藤原くん、どうしてここに……?」
現世に戻ってきて、良く知っている彼に再会できて嬉しい気持ちは本当なのに。どこか冷たい調子で質問をしてしまった自分に驚いた。わたしはなぜ、こんな質問をしてしまったのだろうか。
そしてその質問に藤原くんは、驚いたように一瞬立ち止まった。走ってきたためか、上がっている彼の息遣いだけが静かな神社にある唯一の音のような気がした。
そして彼は落ち着いた声で、そして少しだけ恥ずかしそうに、私の質問に対する答えを告げた。
「急に予感がしたんだ。水城さんが、ここにいるって。それで、行かなきゃいけないと思って……」
「…………」
不思議な返答だった。私はその言葉に喜んでいいのか、恥ずかしがればいいのか、分からなかった。
そして、藤原くんはまじまじと私の顔を見た。その雰囲気に呑まれて、一歩後ずさってしまう。けれど、藤原くんはさらに近づいてきた。
「……それより」
藤原くんの顔が近付く。首をかしげて、顔をのぞき込まれる。彼の青みがかった瞳の中には、私の顔がある。
「水城さん泣いてる。どうしたの?」
恥ずかしくなって、顔を逸らした。取り繕うにしても、泣いた顔はもう見られてしまった。
「なんでもない」
「なんでもなくはないでしょ」
「それは……」
それは、そうなのだけれど。強がって「なんでもない」と言ったことを後悔する。藤原くんは私のことをバッチリ見抜いているらしい。
けれども、どこから説明すればいいのか分からない。それに、安心して泣いてしまったなんて、子供のようで恥ずかしいし。
それでも、怪異に遭遇したのは事実だし、よく分かっていない祓い屋のこともある。
「その、今日の放課後の話なんだけど……」
私が、話し始めようとしたその時だった。
先程と同じ、ズルリという音。底冷えするような空気が、足元を撫でた。
恐怖の中、私たちの視線は自然と音の方を向いてしまった。
境内の中、電灯で照らされた石畳の上。先ほどまで、なにもいなかった場所。
奇妙な黒い影が、そこには立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます