第14話 知らない場所

 目が覚めると寂れた神社にいた。神社だと分かったのは、色がハゲかけているとはいえ赤い鳥居があったからだ。どこまでも続くような石畳と石灯篭。私が倒れているのは、神社の境内の中。石畳の上だった。そして、空はこの世のものではないような灰紫。周囲には木々が不気味に揺れる森。

 その在り様はおどろおどろしく、空気は重い。まるで、瘴気のようだった。


 身体の拘束はされたままだった。どれだけ体をゆすっても、拘束が解ける気配はない。ふと思い起こして霊力で切ってみようと試みる。


 身体の中の霊力を感じる。お腹の底から汲み上げるイメージ。ここ二週間、ずっと続けてきた練習。

 しかし、霊力は感じるのに、汲み上げることはできなかった。体内の霊力を操作できない。


 ──霊力が、使えない?


 頭の中が真っ白になる。どうしよう。たぶん、ここには怪異がいる。それも、今まで退治してきた下級怪異とは比べ物にならないやつが。重い瘴気と二週間の経験がこの場所が危険だと警鐘を鳴らしている。

 そんな中で、霊力が使えないのは。──致命的といっていい。


 イモムシのように跳ねながら、拘束を解こうとする。全身が石畳に擦れて痛い。けれど、霊力が使えず、逃げられないほうが問題だった。

 顔を勢いよく上下左右に振る。髪が頬に乱暴に当たって痛い。頭が石畳に何度も触れて痛い。それでも、ただ動かないよりはマシのはずだ。


 藤原くんに助けは求められない。だってもう、手を煩わせることはできない。二週間つきっきりで、私は何を教わったのか──!


「むー!」


 身体が力む。霊力が暴発する。身体から白い光が爆発的に漏れた。霊力の暴発の影響か、髪はボサボサになってしまった。


「げほっ、ごほっ……」


 砂埃が石畳の上を舞った。けれど、拘束が解けた。やった!

 息は上がっている。けれど、自由になれた。あとは、ここから脱出するだけ。そう思うと、心の中がすこしだけ明るくなるような気がした。


 立ち上がって、制服についた汚れを払う。そして私は、改めて周囲を見回した。

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