第11話 すれ違い

「燈子、無事買えた?」


 綾が二つ目のパンを開ける頃、私は教室に戻ってきた。席に座り、綾にツナマヨおにぎりを見せた。


「へー、ツナマヨ。燈子がツナマヨってちょっと意外かも」

「意外って……」


 綾の中で私のイメージはどうなっているのか。ちょっと気になったけど、時間も余裕があるとは言えるほどないので、おにぎりを開けて、食べ始めた。


「そうだ、最近のヘンな噂知ってる?」

「噂?」

「やっぱ、知らないか。教えてあげる」


 綾は結構ミーハーなところがあるので、噂には詳しい。一方、私はあまり友達付き合いをしないので、噂には詳しくない。綾はよく私に噂を教えてくれるが、私はあまり興味を持てないことが多い。知らない人の話をされても、ピンとこないというのが主な理由だ。


「最近、夕方にホラースポットとかに、高そうな高級車が停まっているんだって」


 ホラースポットと言われて、ドキッとする。最近は怪異退治のためによくホラースポットに通っているからだ。しかし、高級車?

 私と藤原くんは徒歩でしか移動していないし、ホラースポットに停まった車を見た記憶はない。もしかしたら、別のホラースポットや日付が違うだけだったのかもしれない。


「でも、テレビの車っぽくないから、ユーチューバーとかじゃないかってみんな言ってて。もし、見かけたら教えてほしいの!」


 教えてほしい、のところに特に力が入っていた。少し意外だ。


「綾ってホラー系ユーチューバーとか見るんだっけ?」


 綾は美容系ユーチューバーとかを見てそうなイメージだ。


「いや、高級車乗ってるなら有名ユーチューバーかなって」

「ああ、そっちか」


 綾らしい返事に笑ってしまう。


「お、燈子笑った。よかったぁ、今日ずっと難しそうな顔してたから、心配だったんだよ」

「ご、ごめん。でも私、大丈夫だよ」

「うん。でも、何かあったら相談してね? 私だって、燈子の力になりたいんだから」

「うん」


 綾の言葉にうなずく。すこしだけ、元気が戻ってきた。そんな中、廊下からの声が耳に入ってきた。


「あれ、藤原じゃん。今日は休みじゃなかったのか?」

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