第10話 気の重い朝
次の日、重い気持ちのまま学校に登校した。昨日と同じ学校なのに、まったく違う景色に見えた。重い気持ちのまま、教室に入る。
「おはよう、ございます……」
教室を見まわす。今日はまだ、藤原くんは来ていないようだった。そして、自分の席に座り、突っ伏した。重いため息が漏れる。そのまま、ずっと何も考えずに、眠ってしまいたかった。
「おっはよー! ……燈子、元気ない?」
綾はいつものように元気だった。元気で、優しかった。綾は困ったようにわらって、私の前の席に座った。
「何かあった? 話、聞くよ?」
私は綾に何も言えなかった。怪異の話なんてしたら綾を驚かせてしまうし、その話を抜きにして藤原くんとの関係を話すことは不可能だ。でも私が黙っているその間、綾はずっとそばにいてくれた。そのまま、朝のショートホームルームが始まり、一限がはじまった。藤原くんは、学校にやってこなかった。
昼休み。食欲がないままカバンからお弁当を出そうとした。
「あ」
カバンの中に見慣れたお弁当包みが無い。そこで私は、お弁当を家に忘れてきたことに気づいた。なんというか、ツイていない。
ため息とともに机を立つ。購買で何かを買ってこよう。
「燈子、購買? わたし、買ってこようか?」
綾が心配そうに聞いてくる。何を隠そう、我が校の購買は激戦区である。
「ううん、大丈夫」
確かに激戦区だが、なにかしらは残っているはずだ。そう思い直して、私は購買へ向かった。
購買は人は多いものの、激戦の時間は過ぎたようだった。すでに昼休みが始まって十分ほど経っている。取り合いをしている運動部系の男子たちがはけたのだろう。おとなしそうな男女がレジに綺麗な列を作っていた。
それを横目に、食品コーナーを探る。人気の焼きそばパンやカレーパンは当然のように売り切れ。ならばと思い、おにぎりコーナーを見る。ちょうど一つ、鮭おにぎりが残っていた。人目を気にして速歩きで近づく。
あっ。
狙っていた鮭おにぎりは男子に取られてしまった。残っているのは、明太子とツナマヨと納豆巻きだけだった。明太子は辛くて苦手、納豆巻きは学校で納豆を食べることに抵抗が。消去法的にツナマヨを選んだ。
少々レジに並んで、会計を済ます。先生の目を気にして、走らない程度に早足で教室に急いだ。
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