第5話 放課後
放課後になった。結局昼休みのあとからずっと、私はネガティブ思考に囚われていた。なにより、藤原くんが午後の授業に出ていなかったから、藤原くんに迷惑をかけてしまったのではないかと不安だった。ため息を吐きながら椅子から立ち上がると、
「調子悪い?」
なんてことをいいながら、渦中の人物がやってきた。私は彼に迷惑をかけたのではないかと気にかかっていたのに、彼はむしろ軽い調子で話しかけてきて驚いた。
「びっ、くりした……。藤原くん、午後の授業受けてなかったでしょ。心配してたの」
「そっか、悪いな。心配かけて」
肩をすくませて藤原くんは言った。見たところ、元気そうで安心する。
「じゃあ、ちょっと移動しようか」
そんなことを言われて、確かに昨日みたいな事が起きたらたまらないな、と思い提案に頷いた。
移動した先は小さなカフェだった。小さな路地裏にひっそりと佇む店は、昨日会った藤原くんの姿に少し似ている気がした。
「入ってて」
藤原くんは自然にドアを開けて言う。入ってみると内装はアンティーク調だった。暗い木目調のカウンターに、ランプ風の照明。いかにも古き良き純喫茶という雰囲気のある店内。私が内心テンションを上げていると、藤原くんはカウンター席を指さして、
「座ってて。コーヒーでいい?」
「え──、うん」
思わずうなずいてしまう。というか、勝手にお店のものを使ってしまっていいのだろうか。
「この店は、お世話になっているひとが経営しているんだ。店番とかもしてるし。そんな不安そうな顔をするな」
顔に出てたのだろうか、めちゃくちゃ恥ずかしい。でも、そっか。藤原くんはアルバイトとかしてるんだ。少し意外だった。
しばらくして、コーヒーと一緒に藤原くんがやってくる。カウンターにコーヒーを置くと。
「ミルクはこっちの中、砂糖はこっちの瓶」
といって、指さした。私はうなずくと、とりあえずミルクを全部入れた後、角砂糖を2個入れてこぼれないように注意を払いつつぐるぐるとかきまぜた。
ふと視線を感じて藤原くんの方をみると、なんというか若干ひきつった顔でこちらを見ていた。
「お前……」
何か言いたそうな顔でこちらを見ている。しかし、結局何も言わずにかぶりを振って、
「いや、いい。それよりも、怪異払いについての話だったよな」
そう言って、彼は怪異払いについて話し始めた。
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