第6話 祓い屋の仕事

 怪異を祓う仕事の多くは混乱を避けるために、地域に根付いた一定の家系が担うことが多いらしい。藤原くんの家もそういう家系なんだとか。血筋を通して技術と才能を継承するのが怪異払いの家の習わしなんだそうだ。

 けれど、たまにそういう家系の外で私のような才能を持つ人が現れることもあるらしい。しかし、そういう人は才能はあっても正しく技術や知識を身につけることができることは稀らしい。まず、知識を持つ人に巡り合うことができるか。よしんば巡り合えたとしても、その才能を扱う技術を教えられるとは限らないらしい。


「怪異を祓う才能なんだから、教えられそうだと思うけど」


 思わず疑問を口にする。祓う才能という一点で共通しているのなら、技術も教えられそうだと思ったが故の。しかし藤原くんは難しい顔をした。


「家によって継承している才能は違うんだ。うちの家は主に刀を使った体術メインで祓う技術なんだが、他の家では動物を使った式神を使って祓うこともあるって聞いたことがある。単純に怪異を祓うといってもその方法は千差万別だ」


 そしてその技術は基本的に家系で秘匿される。これは昔祓い屋同士の争いなどがあったときに手の内を晒さないようにするためだったらしい。だからこそ、一般出の才能は大成しづらい。けれど、忘却術は多少の誤差はあっても一般人を守るために覚えなくてはいけない強力かつ基礎的な技術らしい。そのため、これをはねのけるには純粋な霊力ちからの強さが必要らしい。

 だからこそ、これを成し遂げた私に怪異払いを教えることができる可能性を感じたらしい。


「でも、本当に祓えるかわからない。だから……」


 藤原くんは一瞬言い淀んだ。


「試しに俺と組んでみるのはどうだろう。もし、祓う技術を教えられたら、水城さんも自衛ができるだろ?」


 その時の藤原くんの表情は、逆光でよく見ることができなかった。

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私と君の怪異譚 先崎 咲 @saki_03

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