第24話

 一応ここでガンプから概要説明。まあ選ぶ時間も無かったからか、ガンプからの小言は少なかった。だがまず時代背景の説明から始まった。そもそも彼女は人工的に作られたクローン人間なのだそうだ。


 未来は人口が今も減り続けているが、肝心のエネルギー、神力は生体でないと伝達が極めて悪い。なので人が使うべきなのだが、その人的資源がそもそも少ない。


 じゃあ作ろうという事で身体強化を施したクローン人間が設計されたが、倫理観から未来でも生産を討論されていた様だ。


 そんな中、どっかの国がクローン人間に動物のミミを付けたキメラを作り出し、ミミついてるから人じゃないです!といって強引に話を通したのだとか。なんか現代でも聞いた事あるぞ、そんな話。


 結局必要性からその言い訳が通されて、それがスタンダード化したとの事。そして。


[現状その主流が命令に忠実なDOGタイプと、耳がこの世界でも目立たないAIPタイプをメインに選定したのですが。]


「はあー、そういう?」


 なんか未来やべえなあという思いと共に、未だ怯えるキツネの子を見る。


「ほら、怖くないわよ。」


「むぎゅー!」


[ツーラー、怯えてはいけません。]


「ちなみにツーラーというのは?」


[原価率からアーマーよりもクローン体の方がコストが低い為、付帯する道具という意味合いからツーラーという名称になります。]


 もう未来駄目なんじゃねえかなあという思いの元、改めてキツネの子を見る。というか女の子か。でも確か性別の選択は無かったな。


[なおツーラーは基本女性です。エネルギーの伝達効率が男性よりも高いので。その上で身体能力を強化して、特殊な筋構造になっております。しかし、この精神状態では戦力として欠陥かもしれません。返品しますか?]


「したらどうなるんだ?」


[私は廃棄処分、ツーラーは良くて食糧となります。]


「良くてか。」


 ナイテイルの返答はもう一種の冗談という事にして聞き流すが、ガンプは基本冗談を言わない。


 と、とりあえずなんとかしないと。というかソフィアが怯えられてショック受けてる。後でフォローを、まあソフィア結構体でかいしな…。


「しょうがねえ、一肌脱ぐか…。」


 俺は腕をまくり、気合いを入れる!


「唸れ俺の猫魂!」


 そしてキツネの子の後ろに気づかれぬ様に回り込み、抱きかかえて。


「ほーれキューちゃん、うにゃにゃにゃ!」


 抱っこして猫の鳴き声をまねる。そう、無職時代の夜の散歩で公園にいった時、野良ネコが寄って来たので仲良くなる為にマスターしたのだ。


 これの実績は高く結構懐柔している。なお猫の声なのはキツネの鳴き声を練習してないのでその代用である。


 だけど何この子、重い!油断すると腰やりそうだが今表情に出す訳にはいかない。日々の戦闘で鍛えられてなければ無理だったぞこれ。


「何でにゃあ?」


『『何で猫?』』


 真顔のソフィアと恐らく顔が合ったら真顔の剣共の声。やめろ。おっさんの猫声を衆人の元やるのもきついんだから冷静にならんでくれ。


 なおキューちゃんはキューキュー言ってるので今名付けた。若干きゅうりが頭をよぎるので後で名前考えよう。というか部品とか番号とか話がきつすぎるんだよ。


 そしてキツネの子は俺の抱っこに少し驚いた後、少々の抵抗もあったが俺のみぞおちでしっかり抱き抱えた後に優しくゆすってあげると大人しくなっていき、騒がず落ち着いた。


「よし、おっけい!」


『はあー、人間ってなんかしら取柄があるもんなんだなあ。』


 リキはそう言って忌憚なく感心する。お前取柄って、もっとあっただろうよ。そして落ち着いたキツネの子は放してあげると、むきゅむきゅ言いながら俺の後ろについてくる様になったので、座椅子に一緒に座ってケーキを食べさせてあげると目を輝かせていた。


「いやー、なんとかなったなあ!」


 そう言って俺はあっはっはと笑っていると、ソフィアが神妙な顔をして口を開く。


「あの、その子、戦闘要員なのよね?」


 その一言で俺はキツネの子に運ぶ三口目のケーキのスプーンが止まってしまった。

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